Episode18:核心
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この実技課題は、その低下した発動速度を少しでも補うことを目的とした訓練だ。
けどまあ、なぜか魔法式を介さずに魔法を発動できる俺には、正直こんな訓練必要じゃなかった。
「はーいはやとくーん、001msー、最早瞬間的に発動しておりますー」
「……あとでジュース一本奢ってあげるよ」
すっかりやさぐれてしまった鋼に、俺は苦笑い混じりでそう言ったのだった。
「見つけたぞ」
「ヒィッ!?」
背後からガッシリと肩を掴まれ、耳元でそう囁かれた俺は悲鳴を上げて軽く飛び上がった。
「わ、渡辺委員長…!?」
放課後になり、鋼にジュースを奢ってあげたあと俺がカフェテラスで風紀委員の仕事をサボ…ゲフンゲフン。休憩しているとき、俺の前に現れたのはあろうことか風紀委員長の渡辺摩利先輩であった。
「奇遇だな、まさか、お前もここにいるとは……見回りはどうした?おい露骨に目を逸らすな」
「ごめんなさい…」
流石に逃げきれないと思い、俺は素直に謝った。その後、聞こえてきたのは、罵声ではなく、軽い溜息。
「お前は、私に似ているよ」
「俺が、渡辺委員長にですか?」
「ああ、一年の頃は、私もお前のようにこうやってバレないようにサボっていたものだ」
とてつもなく予想外だった。まさか、あの渡辺委員長が俺と同じサボり魔だったとは。
「まあだからといって、お前がサボっていた事実は消えないんだがな」
「うぐっ…!」
「少し私に付き合え」
どうやら、俺に拒否権はないようだった。
「んで、俺は二度目のカフェイン補給なんですが…」
「不満か?」
「カフェイン最高!」
いや、実際はカフェインなんて感じられないんだけどね。
あの後、渡辺委員長に口出しすることができない俺は再びカフェテラスでコーヒーを飲むことになっていた。向かいの席には、この間の市原先輩でもなく、いつもの鋼でもなく、三巨頭と呼ばれるこの学校随一の魔法師である渡辺摩利委員長。
「それで、どうせ委員長の目的はあそこの二人でしょう?なら、俺なんかいらないんじゃないですか?」
そう言って俺の後ろを指差す。そこには、いつぞやの時のように向かい合って座る男女の姿があった。達也と、壬生先輩だ。
「私が一人でコソコソしているほうがおかしいだろ?」
「ああ、なるほど。渡辺委員長のイメージなら逆にズカズカ踏み込んでいきそうですもんね」
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