第八章
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第八章
その頃江田島に一隻のフェリーが呉から来た。この島には当然の様に電車は走っていない。車で来れないこともないがかなりの遠回りとなる。従って最もよく使われる交通手段は船である。
フェリーは呉からのものと広島からのものの二つがある。広島から呉に行くのに結構時間がかかるが広島からでも時間は大して変わらない。ただ船は呉からのものの方が大きくゆったりと出来る。
そのフェリーから一人の男が下船した。茶色の髪を中央で分けた細面の男である。細い一重の眼をした色の白い中々の美男子である。紺色のスーツに青いネクタイと白のカッター、そしてその上からクリーム色のコートを着ている。
背は結構ある。本郷よりも少し大きい程か。だが全体的に細い為大柄という印象は受けない。
「遅れてしまったな」
その男はフェリーの桟橋を出て一言言った。
「本郷君はどうしているかな。また可愛い女の子に声を掛けていなければいいが」
どうも本郷の事を良く知っているらしい。
「さて、と行くか。あの道をまっすぐに行けばいいな」
目の前に車道は広いが歩道の狭い登り道が見える。
ふとタクシーやバスが目に入る。だがそれには乗ろうとしない。
男はそのまま歩いていく。そして登り道の歩道を歩いて行く。
「そうですか、海の中には何もおかしな所は無かったですか」
学校長が校長室で本郷の報告を受けていた。
「はい。どうやら海から来た奴ではないようです」
本郷は言った。捜査中に攻撃を仕掛けられた事は黙っている。
「だとすればやはり中にいるのですか。だとすれば何処に」
校長は腕を組んで考えた。
「何日かこの学校を捜査させて頂きましたが色々と隠れようと思えば隠れる事の出来る場所が多いですね。ひょっとしたら思わぬ場所に潜んでいるのかも」
「思わぬ場所・・・・・・」
その言葉に校長は更に思案を巡らせた。
「何しろ広い学校ですからな。思い当たる場所は多くあります。とにかく隠れていそうな場所は私が考える限りでもかなりありますよ」
「ですね。今その場所に一つずつ結界を置いていっているのですがこれにも一つ問題があります」
「何ですか?」
「若し吸血鬼が一つの場所に隠れておらず常にこの学校内を移動しているとしたら」
その言葉を聞いてさしもの学校長にも悪寒が走った。まさかこのすぐ側にも吸血鬼は蠢いているのかも、そう考えるだけで言いえぬ恐怖に囚われた。
「しかも相手は昼にも行動を起こしています。これは注意して考えるべきです」
多くの人は吸血鬼は夜行性だと考えている。ここに盲点があるのだ。
「しかも襲われているのは一人でいる者ばかり」
「はい。複数でいる場合は事件は起こっていません。これからは校内にいる人は極力一人での行動は控えるべきです」
「・・・わかりまし
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