最終話「黒崎麗華」
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そして、翌日。
「全員そこに直れ!」
竹刀を掲げ、麗華は男子部員を座らせる。
「えーっと、なんスか?」
「肌でも見せてくれるんですか?」
すっかり生意気な口しか聞かなくなった後輩に向け、麗華は竹刀の切っ先を向ける。
「お前達の根性はすっかり歪んでしまっている。いや、私もだ。私自身もこの前のようであってはならない。お前達には私の鍛錬に付き合ってもらうぞ」
「えー……」
「面倒ッスと」
想像通り、嫌そうな反応が広まっていく。
だが、麗華は負けなかった。
「私は弱みを握られた。だからあんな目に遭った。お前達はどうして来た? お前達も弱みを握られたとでもいうのか」
「それは違うッスけど――」
反論する一人の部員がそのまま何かを言いかけるが、麗華はそれは遮った。
「ならば! 欲望のままに昨日は皆私の元へやって来たというわけだ。そして、こう言っている私自身もどうなったか、その姿はみんなも見たかもしれない。だからこそ! そんな堕落した自分を鍛え直す必要があると思う。悪いがみんなにも付き合ってもらうぞ!」
「けど先輩――」
「文句がある奴はかかって来い! もし私を倒せるようなら、お前達、私に何をしても構わないぞ?」
麗華がそう言った瞬間、部員達は沸きたった。
「え? マジっすか?」
「じゃあ俺、ちょっと挑戦しよっかなー」
それぞれの竹刀を握り、男子部員は全員が立ち上がった。
「いくぞ!」
そして麗華は部員達と立ちあって――。
挑んでくる全ての部員に面打ちを当て、降参させ、鍛錬に付き合うと約束させ……。
「麗華先輩、勝ってもいいんですよね?」
最後の一人、竹内始が竹刀を構えた。
「勝てるものならな」
麗華も気を集中する。
負けはしない。
いや、負けてもいい――良くないのだが、負けても折れないことが大切だ。誰にどう思われようと、自分は自分であり続ける。そうすれば、どこかに自分をわかってくれる存在は必ずる。
「いざ尋常に、参る!」
そして、麗華と始の立ち合いが行われた。
この一本がどんな結果になろうとも、麗華は二度と折れはしない。それが相手を楽しませることもあるだろう。男は屈辱に歪む麗華を楽しむ。だが、それでも折れずにい続けてやる。最後の最後で勝つために――
いつかあんな検査なんて無くしてやるために、今はとくかく剣を振るった。
最後まで立ち続けているために、心を鍛えるために。
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