第七章
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えていた。海の幸は嫌いではない。
小さい穴は用心して通り過ぎて行く。隠れているとすれば大きな穴だ。小さな穴はかえって危険だ。蛸なら墨を吹くだけだがもしウツボなら冗談では済まされない。
(見ればガンガゼまでいる。下手に触ったら吸血鬼どころじゃないぞ)
手の動きに敏感に反応する海栗を見て思った。それにしても大きな穴が見つからない。
(おかしいな。怪しい場所は一つも無いぞ)
本郷はいぶかしんだ。海ではなかったのか。
(一番怪しい場所だったが。だとすると陸しかないな)
そう考えていた時だった。頭上を何かが襲った。
『何っ!?』
それは緑の槍だった。二三本空から海中へ突き刺さった。
『上かぁっ!』
急いで上へ急ぐ。どうやら第二撃はまだらしい。
海上へ顔を出す。そして咄嗟に周りを見る。
「何処だっ!」
だが緑の槍の主は何処にもいなかった。周りには小船も無く海面も静かだった。
「いないか・・・・・・」
気配もしなかった。何処から攻撃したのかさえ解からなかった。
「本郷さ〜〜ん、どうしましたあ〜〜〜っ?」
見れば短艇置き場はかなり遠くになっていた。呼び掛ける国母二尉の巨体がまるで豆粒の様である。
「あ、何でも無いです」
大声で言葉を返す。結局この捜査では何も手懸かりは得られなかった。
「海にはいないか、結局」
スーツやアクアラングを返し本郷はヨット置き場から海を眺めていた。
「しかしさっきの緑の槍・・・・・・。明らかに俺を狙っていた」
それが誰の手によるものか、解からぬ筈がない。
「やっぱりいるな、化け物が」
ふと赤煉瓦を見る。日に照らされその赤さが一際際立っている。
「俺に喧嘩を売ってくれるとはな。じゃあ買ってやるよ、高くな」
風が吹いた。静かだった海面が波立つ。
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