ある約束の戦い (後)
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た強烈な、しかし細い衝剄に対処する。
外力系衝剄の変化、繰弦曲・深淵。
筒状になった鋼糸に吸い込まれた衝剄は進むにつれて放たれるによって先細り消え去る。
しかも吹き飛ばされながらも鋼糸を網ではなく布状に織り上げクッションのようにして勢いを殺す。空を飛ぶ勢いが死んだところで空中に張り巡らせた鋼糸の上に着地し、そこからアルシェイラを見下ろす。
アルシェイラからの更なる追撃はない。何故なら彼女もまた痛手を負っていたからだ。リンテンスを殴りつけた瞬後、その腕は断ち切られていたからだ。
追撃として飛ばした衝剄はアルシェイラのものとしてはか細かった、だがそれでも全力で放たれたのだ。
「終わりだ」
アルシェイラの周囲には鋼糸の網が幾重にも張られ衝剄を飛ばしたとしても全て受け止められるだろう。全力で行ければ話は別だがそこまで剄を練る暇を今更リンテンスが与えるとは思えない。
だがそこまででなくとも自分が通る為の隙間を作る為なら話は別だ。鋼糸の網に接触するタイミングで衝剄を放ち鋼糸を撥ね飛ばす。これまでやってきたことと変わらない。
そう考えたアルシェイラが動こうとした時、予想だにしていなかったところから変化が現れた。
足元だ、地を裂いて現れた鋼糸の群れ。
外力系衝剄の変化、繰弦曲・魔王 終曲。
地の底より現れたアルシェイラを掴む魔王の手、その手を振り払おうとするがその前に周囲から新たな手が伸びる。伸びる手が次々とアルシェイラに襲い掛かり身動きを封じていく。
一瞬の後、鋼糸の繭に包まれた様になったアルシェイラの姿があった。
無理矢理に衝剄を放ちまとわりつく鋼糸を弾き飛ばそうとした瞬間、体の内部で何かが動くのを感じる。感覚の全てに引っかからないように侵入した鋼糸、そこから衝剄が撃ち出されたのを感じ取ったのだ。
だがそれにアルシェイラが気付いたのは意識が暗黒に呑み込まれた後だった。
目を覚ますとそこは王宮にある自室ベッドの上だった。切断されていた右腕はすでに繋がっており、身体中についていた傷も全て治癒されており激戦の痕はなかった。
「あーあ、ついに負けちゃったか。ほんと、どうしようかしら」
呟き目を覆う。その手の下には一筋の光があった。
「陛下、よろしいですか」
「何」
蝶型の念威端子、エルスマウの声が響く。体勢を変えずベッドに横たったままどこか力のない声で返事をする。
「リンテンス様から伝言ですが……、『賭けの取立てだ、来い』、とのことです」
「そんなこともあったわね、でどこに行くの」
リンテンスが指定した場所、そこは外縁部の中でも特に人気のない一角だった。人の住むところからも離れた、云わば忘れられた一角のようなものだ。
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