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吸血花
第六章
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隊の分隊長です。こういった勝負事に異様に燃える人でしてね」
「成程、だからあんなに嬉しそうなのですか」
「ええ。そのかわり負けた時は物凄く機嫌が悪くなりますが」
「ははは、解かり易いですね」
 そして本郷は隊舎に帰った。とりあえず海に潜る事を許可してもらおうと考えていた。
「俺自身で潜るか。自衛隊の人に迷惑かけちゃ悪いしな」
 彼はダイバーの資格も持っている。実際に河童や水虎を潜って退治した事もある。
 大講堂と呼ばれる古風な趣のある建物の前を横切る。入校式や卒業式等重要な行事が行なわれる場所だという。
「綺麗だけどやけにものものしい建物だな」
 本郷は見上げながらそう思った。欧風を取り入れる事の多かった兵学校だがこの建物は赤煉瓦と並んでその傾向が強い。白くまるで宮殿の様である。
「これだけ大きいと掃除も大変だろうな。そういえばいつも大人数で掃除してるな」
 その時前から誰かが全速力で駆けて来た。
「?俺にか?」
 その通りだった。見れば当直士官の武藤一尉である。3分隊の分隊長らしい。
「どうしたんですか?一体」
 そう言いながら何かあるな、と思った。また犠牲者が出たか。内心暗澹たるものになった。
「・・・・・・ちょっと来て下さい」
 その必死に狼狽しそうになるのを抑えた様子から大体察しはついた。彼について行く。
 隊舎の二階だった。そこに犠牲者はいた。
「やはり・・・・・・・・・」
 その屍を見て自分の予想が当たった事を嫌に思った。物言わぬ屍は虚空を見上げたまま何も語らない。

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