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戦国異伝
第百四十一話 姉川の合戦その七
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「我が軍の十分の一じゃな」
「その十分の一だからですか」
「そこに浅井殿の焦りがありますか」
「本来十倍の相手にはまともに戦ってはならぬ」
 信長は毛利と服部に孫子に書いてあることを述べた。
「このことは御主達も知っておろう」
「はい、正面からは決して戦わず」
「後ろや横から攻めては逃れ攻めては逃れですな」
「大兵には正面から戦うものではない」
 信長はこのことを誰よりもよくわかっていた、わかっているが故になのだ。
「もっともこちらをあえて少兵にして大兵を油断させるやり方もあるがな」
「桶狭間ですな」
 義元を生け捕りにした毛利が言った。
「あの時の様に」
「そうじゃ、あの時当家は一万五千あった」
 そのうちの一万以上をあえて美濃との境に向かわせ清洲城には二千の兵だけを置いて今川を油断させたのだ。そして桶狭間でだったのだ。
「普通に戦うよりも少ない兵で油断させる場合もある」
「それがありますな」
「少ない兵でも戦い方はあるのじゃ」
 あえて兵の数を少なくさせるやり方も入れての言葉だ。
「しかしじゃ」
「今の浅井殿の戦い方はですか」
「どうにも」
「それしかやり方がないからのう」
 全ての兵で一気に進みそのうえで信長の首を狙う、確かに浅井が織田に勝つにはこのやり方しかなかった。
 だがだ、それがだというのだ。
「しかしそれこそがじゃ」
「殿の読みですな」
「まさに」
「そうじゃ。さて」
 本陣にいたのは彼等だけではない、その他にもだ。
 美濃四人衆も控えている、信長は彼等に顔を向けて言った。
「では刻が来ればな」
「はい、手筈通りですな」
「我等もまた」
「うむ、動け」
 そうせよというのだ。
「わかったな」
「はい、では」
「その時に」
 四人も信長の言葉に確かな顔で応える、そうしてだった。
 彼等は今はその刻を待っていた、浅井の軍勢は今も織田家の陣を破っていく。
 柴田や佐久間、羽柴の陣も破られた、そして遂にだった。 
 十段目も破った、その時にだった。
 浅井の家老達が長政に対して言った、その言葉はというと。
「殿、次の陣を破ればです」
「いよいよですな」
「そうじゃ、織田家の本陣じゃ」
 そこに迫るというのだ。
「そしてじゃ」
「そしてですな」
「本陣に攻め入り」
「義兄上の御首を獲る」 
 何としてもだ、そうするというのだ。
「わかったな」
「はい、では」
「絶対に」
 こう言ってそしてだった。
 彼等はそのまま十一段目の陣も破った、後残るはだった。
「よし、よいな!」
「はい、今から本陣に!」
「織田家の本陣に参りましょうぞ!」
「もう一押しじゃ」
 その一押しでだというのだ。
「織田家に勝てるぞ」
「織田家の大兵にです
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