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吸血花
第二章
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第二章

「という事件がこの学校で起きまして」
 黒地の制服を着た中年の男が歩きながら傍らの白ジャケットに青ジーンズの男に話をしている。
 黒く濃い髪に濃いしっかりとした眉。人懐っこそうだがしっかりとした顔立ちである。
 身体つきもしっかりしている。背こそあまり高くはないが筋肉があり贅肉は少ない。姿勢も良く歩き方が堂々としている。
 見れば腕に金の太い線が三本入っている。これは幹部を表わすらしい。太い線三本だと二佐になる。
「何かこの江田島にはあまり似つかわしくない話ですね。幽霊とかならともかく」
 ジャケットの男は松林を見ながら話をした。よく手入れされている。
「おや、ここの事はご存知でしたか」
 二佐は少し眉を上げて言った。眉を上げたぶんだけ嬉しそうである。
「ええまあ。そっちの方面じゃあ有名なところですからね」
 右手にその隊舎が見える。坂道を下っていく。
「随分綺麗な隊舎ですね。赤くて」
 隊舎を一目見て言った。
「ええそうでしょう。これからの海上自衛隊をしょって立つ人材が育てられる場所ですし。これ位の設備がなくては」
「成程ね。確かに住居環境も大事ですからね」
「そうです、よくわかっておられますな」
 男はそれはちょっと褒め過ぎだろう、と思ったが口には出さなかった。少し恥ずかしかった。
「昔は今目の前に見える建物で寝起きしていたのです。夏は暑くて大変でしたよ」
 二佐の顔が懐かしいものを見る目になる。色々と思い出があるらしい。
「一部屋に二十人程いまして。あまり暑いと屋上で寝たものです」
「それはまた凄いですね」
 確かにこの江田島は暑い。瀬戸内海にあるせいか気候が暑く感じられる。
「昔の話ですけどね。今のこの隊舎はクーラーも暖房もありますよ。ただ節約はしていますが」
「ははは、まあそうでしょうね」
 その言葉が妙におかしかった。ただし本当に節約して夜の十時以降はクーラーも暖房もスイッチを入れてはいけないらしい。
 坂道を降りる。左手に少し小高い丘みたいなものが見える。
「かっての海軍の時代にはあそこに登って故郷を偲んだそうです。今は携帯電話という便利なものがありますから登る者はおりませんがね」
「成程」
 かっての海軍の息吹がまだ残っている。そう感じた。
 右手にはグラウンドがある。実に広いグラウンドだ。
 先程二佐がかっての隊舎だと説明してくれた建物の横を進む。見れば学校の校舎にそっくりだ。
(なんか職員室の前みたいだな)
 ふとそう思った。
 その校舎に似た建物を過ぎ階段を登る。ふと左手に小さい建物が目に入った。
「あれは?」
「ああ、あれは武器庫です。中に銃等が保管されております」
「あそこがですか」
 特に驚かなかった。自衛隊の施設である。銃位置いていなくては
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