第二章
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話にもならないだろう。
階段を登り終え廊下に出た。見れば赤煉瓦の建物の前だった。
「これがあの・・・・・・」
本では読んだ事がある。海軍兵学校の教室として使われ今は幹部候補生達の教室として使われている建物、赤煉瓦である。
本来の名は生徒館といった。だが殆どの者がこの通称で呼ぶ。それ程親しまれている名なのだ。
「こちらです」
左手にある階段に案内される。コンクリートの階段を登っていく。
階段を登り終え左を曲がる。講堂が並んでいる。
「今は教務中でしてね。皆中で講義を受けておりますよ」
古い床である。しかし頑丈に出来ている。
ある部屋のドアの前に着く。二佐はそのドアにノックをした。
「入ります」
そう言って中に入る。男も案内される。
「こんにちは」
男は部屋に入ると頭を垂れて挨拶をした。部屋の中は質素ではあるが綺麗に清掃され床には絨毯が敷かれている。前に学校の校長が使うような机が置かれその後ろは大きな窓である。左に我が国の国旗が飾られ右にはトロフィー等様々なものが置かれている。
机のところには白髪の男性が立っていた。黒地に金の制服である。腕にはかなり太い金の帯がある。これは海将補のものである。彼も実際に見たのは初めてだった。
見ればその海将補の男性も頭を下げている。これには正直驚いた。将軍や提督といえば威張っているものだと思っていたからだ。
「ようこそいらっしゃいました」
海将補は言った。見れば端正な顔である。歳は五十程であろうか。しかしその顔には皺もあまりなくよく日焼けしている。そしてやはり背筋が伸びている。背も高く体格もいい。
「京都から来られたそうですな。遠路はるばると御苦労様です」
「いえ、仕事ですから。本郷忠(ほんごうただし)と申します。どうかよろしく」
「こちらこそ。この海上自衛隊幹部候補生学校の校長を務める山本と申します。よろしくお願いします」
「は、はい。こちらこそ」
あまりに低姿勢なので驚いた。自衛官は一般市民に対して腰が低いとは聞いていたがこれ程までとは思わなかった。
「ところで本郷さんお一人だけですかな」
山本校長は落ち着き、かつしっかりとした声で尋ねてきた。
「はい」
「もう一人来られると聞いたのですが」
「相方ですか。ちょっと仕事で遅れます」
本郷は簡潔に言った。
「おや、そうだったのですか。私はてっきりお二人が同時に来られると思ったのですが」
「すいません、こちらの連絡ミスでして」
「まあそれでは仕方無いですな。本郷さん、貴方がこの海上自衛隊幹部候補生学校に呼ばれた訳はお聞きしていますね」
「ええ。何でも奇妙な殺人事件が起こったとか」
本郷の顔が変わった。眼の光も鋭くなる。
「はい。これがその写真です」
校長は一枚の写真を取り出
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