第十九章
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た。無数の赤い花びらが辺りに舞った。
「これは・・・・・・・・・」
本郷の手の平にそのうちの一枚が舞い降りた。
「彼女の最後の一咲きだ。滅び去る間際のな」
役の手の平にも一枚舞い降りた。彼はそれを指で取った。
「今度は魔界に生まれ変わるか」
役はその花びらを見つめつつ言った。
「それも良いだろう。せめて折る者のいないあの地で永遠に咲き続けるのだ。父の想いを抱いてな」
「え・・・・・・・・・」
彼の言葉は本郷の耳にも入った。そして同時に別の言葉も。
『パパ・・・・・・・・・』
それはメアリーの言葉だった。父の造った赤煉瓦に対して言った最後の言葉だった。
「あの女・・・・・・・・・」
「死して魔物になってもその根には人のものが残っていたようだな」
一陣の風が吹いた。それが花びらを全て運び去ってしまった。
風が役のコートをたなびかせる。それはまるでマントのように見えた。
花びらは全て風が運び去ってしまった。そしてその中に消えていった。
「終わったかな、これで」
本郷が風の中に消え去っていく花びらを見送りながら呟いた。
「うん。これでこの事件は全て終わった」
役が赤煉瓦を見ながら言った。
「・・・・・・そうか、やっとか。長かったような短かったような」
本郷が肩の力が急に抜けたような感じの声で言った。
「私にしては短かったな。まあ途中からここへ来たせいもあるが」
「俺はその前から色々と調べてましたからね。二回もあいつに近寄られましたし」
懐から煙草を取り出す。そして火を点けようとする。
「おい、ここでは慎んだほうがいい」
「おっと、そうでした」
役に窘められ本郷は煙草を元へ戻した。
「まあ煙草は何時でもいいか。それにしてももうすぐ朝になりますね」
二人は海のほうを見た。そこに広がる空は次第に白くなってきていた。
海もである。その闇の中に潮騒だけ響かせていたのが徐々に白波も見せはじめている。
「もうすぐ朝か」
本郷はその空と海を見ながら呟いた。
「どうだい、煙草よりもこっちのほうが一服にいいだろう」
役は彼に微笑んで言った。
「ええ」
本郷も微笑んだ。そして海の方へ進んだ。
「確かに仕事の後の朝日は最高ですね」
「ああ。今日でここともお別れだ。じっくり見るとするか」
「そうですね」
しかしそうはいかなかった。海を見る二人のところに誰かが自転車で来た。
「あっ、お二人共そちらにいたんですか。探しましたよ」
伊藤二尉である。紫のジャージを着ている。
「探したって・・・何かあるんですか?」
二人は怪訝そうに尋ねた。
「ええ。我が校の名物行事ですよ」
伊藤二尉はそう言うとにこりと笑った。
「名物行事って・・・・・・あれですね」
「ええ、あ
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