第十八章
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第十八章
「甘いっ!」
二人はそれぞれ左右に跳んだ。そして同時に肩口から斬り掛かる。
メアリーはそれを瞬間移動でかわした。本来ならば二人のうちの何れかのすぐ後ろに現われただろう。
だが彼女はそこには現われなかった。参考館の上にいた。
「そこか」
炎の剣は到底届かない。だが二人には余裕が見られた。
「ここならっ」
メアリーは今度は狙いをしかと定め髪の槍を放った。それは的確に二人を狙っていた。
だがそれも二人にはかわされた。
「もうそれは見切った」
「そんなくだらねえ事してないで降りて来いよ」
二人は悠然と彼女のほうを見上げた。それを見た彼女の顔が口惜しさで歪んだ。
「ちっ」
役は式神を放つ。炎の鳥がメアリーに迫る。
彼女はそれを身を捻ってかわした。こちらもその程度の攻撃、と甘く見ていた。
だがそれが失敗だった。式神は自らの意志も持っていたのだ。
火の鳥は弧を描いた。そしてメアリーの背を狙った。
「がはっ」
背に炎の直撃を受けた。メアリーはそれに耐えられず下に落ちた。
「ぐうう・・・・・・」
それでも立ち上がる。火は髪で消したがかなりのダメージだった。
「迂闊だったな。式神は自らの意志も持っている」
役は苦悶の表情を浮かべながら立ち上がるメアリーを見つつ言った。
「もっともそれにあえて気付かせないようにしたのだがな。どうだ、中々の威力だろう」
「ぬ、ぬかったわ・・・・・・・・・」
メアリーはその整った顔を歪ませた。役を睨みつけるその顔はまるで夜叉の様であった。
「しかしこの程度で私を倒せるとは思わないことね。夜はまだまだ長いわよ」
そう言うと両手を胸の前で交差させた。そして爪を全て伸ばしてきた。
「行けっ」
爪を二人へ向けて突き出した。まるで機関銃の様に二人に襲い掛かる。
「ムッ」
二人はそれをかわした。爪は隊舎やアスファルトに突き刺さった。
「そういった使い方もあるのか」
本郷はアスファルトに突き刺さった緑の爪を見て呟いた。
「どうかしら、中々の威力でしょう」
メアリーは満足げに微笑んで言った。
「確かにな。だがそれならばこちらにも考えがある」
役の目が光った。
「行くぞ本郷君、場所を変える」
「はい、役さん」
本郷は役の言葉に従った。二人はじりじりと退いていく。
「フフフ、何処に場所を移そうとしても無駄な事」
メアリーは爪を飛ばしつつ二人を追った。剣や刀に帯びられた炎を警戒して瞬間移動による攻撃は行なわない。
二人が選んだ場所は短艇庫の前だった。二人は松林に隠れるとうにしてメアリーを待っていた。
「あら、ここは」
その場所を見てメアリーは笑った。
「そうだったな。俺はここで貴様に手厚い歓待を受けたんだったな」
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