魔石の国―Law and affection―
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キノ。あの子なんであんなこと聞いてきたんだろう。何かあるのかな?」
エルメスがキノに話しける。
「さあ。どのみちボクには関係のないことだしどうすることもできない」
キノは少年からもらった先の曲がった棒を伸ばした。
「今日はもう寝ることにしよう」
キノは吊り下げられたばかりのランプをはずす作業にとりかかった。
次の日。キノが入国してから二日目の朝。
キノは夜明けと同時に起き、軽く運動をした。
そしてパースエイダーの整備と訓練を一通りこなすと、ドアがノックされた。
「キノさん、おはようございます。起きていらっしゃいますか?」
扉の外から女性の声がした。
「はい」
「朝食ができましたよ」
ゆるやかな口調で女性はそう告げた。
質素な朝食の後、キノとエルメスは女性に案内され水浴びのできる大きな池に来ていた。
そこは集落から北に行ったところにあった。
池の水はとてもきれいて底が見える程澄んでいた。
「綺麗でしょう。少し遠いですけれど、ここが一番いい場所だと思うんです。宮殿の近くにありますし、人もほとんど来ませんし」
女性の言う通り、キノ達以外に人影はなかった。
「私もなんだか水浴びがしたくなってきました」
女性はキノに子供っぽく笑い掛けた。
「ご一緒してよろしいですか?」
「……。ええ」
キノは頷いた。
エルメスは池の脇に置かれていた。
水は波紋を描き時折、魚が泳いでいくのが見えた。聞こえてくるのは水の音と鳥のさえずりのみだった。
「暇だなぁー」
エルメスの声のみが響いた。
「こうやって誰かと一緒に水浴びをしたのは何年振りかしら」
そよ風に髪をたなびかせながら、女性は先程までいた池を見つめた。
「夫の母と来たのが最後かもしれません」
キノは黙ってエルメスとともに耳を傾けている。
「私、両親を小さい頃に亡くしてから、他に身内もいなくてずっと独りだったんです」
女性は語り始める。
「でも夫と結婚して義父と義母ができ、子供も授かりました」
女性は自分の胸に手を当てた。
「自分に家族ができてとても嬉しかったんです。この国は家族、身内を重んじるところがありますから」
女性は池からキノへと視線を移し
「でも義父は六年前、義母も三年前に亡くなってしまいました。今では私の身内は夫とあの子だけです。だからキノさんとエルメスさんがいらした時、また家族が増えたようで歓喜の気持ちでいっぱいになりました」
そう言って微笑んだ。そしてハッと気が付いたように瞬き
「ごめんなさい、こんなことをお話しをして。つまらなかったでしょう」
口許に両手を当てた。
「そんなこと
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