魔石の国―Law and affection―
[5/13]
[1]次 [9]前 最後 最初
ズボンのポケットから先の曲がった黒い棒を取り出していた少年は、その動作を止めてしまっていた。目を丸くしている。
キノは少年にエルメスを紹介し、エルメスに魔石のことを教える。
「――で魔石は二〜三ヶ月ぐらいで光を失うそうなんだ。それで魔石には明かり以外にも色々な種類があって――」
キノが呪い(まじない)を施された魔石についてエルメスに話す。
「へえー、だけどそれ、本当に効果があるかは怪しいよね」
エルメスが率直な感想を言う。キノはエルメスのタンクを一発叩く。
「エルメスさんの言う通りだね、ボクもそう思うよ」
少年は天井から突き出ているフックに、伸縮自在で先が曲がっている棒をうまく操り、ランプを吊り下げながら会話に加わる。
「一般人にはとても買うことはできないから実際に確かめることもできないしね。でもね……」
少年は棒を天井に伸ばしたまま動作を止める。
「想いの込められている魔石はね、本当に綺麗なんだよ。どんなモノよりも、魅せられる」
少年はキノの方を向き、恍惚した表情で語った。
「……」
キノは無言で少年を見つめていた。
「どんなモノよりも魅せられる……。本当に」
少年はもう一度繰り返した。どこか、遠くを見ているようだった。
少年は棒を下へと降ろした。
「ねぇ、キノさん。キノさんは色々な国を旅しているんだよね?」
唐突に少年はキノを見据えて尋ねる。
「そうだけど」
キノは答える。
「一つ聞きたいことがあるんだけど」
「なんだい?」
少年は棒を縮めて床に置いた。そして言った。
「『人間』について、どう思う?」
「どうとは?」
キノは怪訝そうに少年を見遣る。魔石の明かりに照らされる顔からは何も読み取ることはできなかった。
「『人間』ってやっぱり醜い?」
無邪気な声でさらりと少年は疑問を投げかける。キノは数秒間、沈黙した。
「……。どうして、そんなことを聞くんだい?」
「えっ」
逆に問い返され少年は虚を衝かれたような表情をした。
「だって――……」
答えようとして少年は何かを思い出したのか、口の動きを止めた。唇を空回りさせた後
「なんとなく聞いてみたいと思っただけだよ」
とだけ言って立ち上がり
「そろそろ自分の部屋に戻ろうかな。キノさん、明かりが足りなくなったら瓶の中に魔石が入っているから継ぎ足すといいよ。それと明かりが不要になったら、瓶の中に戻して蓋をすれば光は洩れないはずだから」
と慌てて説明した。
「あと、コレ。ランプを取り外したりするのに使って」
少年はキノに棒を渡すと、ドアの方へ行き
「じゃあキノさん、エルメスさん、おやすみなさい」
と告げ部屋から出ていった。
扉が閉まり、遠ざかっていく足音が響き聞こえなくなった頃。
「ねぇ、
[1]次 [9]前 最後 最初
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ