第十六章
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第十六章
「この花は私自身。この花が咲くようになって私は初めて動けるようになったの。そして・・・・・・」
「人の血の味も知ったってことか」
本郷が言った。
「そう。怨みは血そのもの。血が欲しくてたまらなかったわ。渇いて、乾いてしょうがなかった。だからここの生徒の血を頂いたのよ。とても美味しかったわ」
メアリーはその血の色をした唇を歪めて笑った。
「そしてそれにより渇きを癒した」
役が問う様に言った。
「そう。血を吸ったら身体に力がみなぎったわ。今まであの煉瓦の中に潜み飢えと渇きに悩まされていたのにそれが嘘のように満ち足りたわ。そしてこの美しい身体も元に戻ったし」
メアリーは二人にその白い身体を見せつけるようにして言った。
「血、血さえあれば私は飢えや渇きに悩まされず美しさを保っていられるの。どう、素晴らしいでしょ。永遠にこの美を保っていられるのよ」
二人に問いかける様な声で言う。
「そしてそれにより多くの罪の無い人達が死んでもいいのか」
役が言った。表情が無くまるで仮面の様な顔である。
「人?人がどうしたっていうの」
メアリーはせせら笑うように言った。
「人なんて私にとっては食べ物でしかないわ。だってそうでしょう?私はもう人じゃないもの」
その笑みはまさに異形の者の笑みであった。
「私は人でなくなったの。それなのにどうして人の命を考えなくてはいけないの?」
逆に二人に問い掛ける様に言う。
「私はほとんど殺されたようなものだったわ。あの貴族の将校様に。人にね。それがどうして人の事を考えなくてはならないの?」
「・・・・・・・・・」
二人は黙っている。一言も発しない。
だがその目はメアリーから離れない。口を横一文字に結び彼女を見ている。
「そしてずっとこの煉瓦の中で飢えと渇きに苦しめられてきたわ。その苦しみが貴方達にわかるかしら。わからないでしょうね。人には」
まだ言葉を続ける。
「そしてやっと花に変化する事が出来て煉瓦の中から出て人の血を吸う事が出来たの。そして飢えも渇きも癒えこの美しい身体も戻ったわ。人の血でね」
口を三日月の様な形にした。その間から緑の歯が見える。犬歯は牙の様になっていた。
「もう飢える必要もないわ。これからは人の血を吸って永遠に生き続けるのよ。そして夜の世界を何時までも楽しんでいくの」
「・・・・・・言う事はそれだけか?」
本郷が口を開いた。
「何?」
メアリーはその言葉に整った眉を少しだけピクリ、と動かした。
「言いたい事は終わったかと言ったんだ、化け物」
「化け物?この美しい私が」
その目に不快の色を映し出す。
「そうだ、貴様は醜い化け物だ。恨みだけでこの世に残りそしてそれが肥大化した化け物だ。その赤い花は貴様のその醜い飢えた
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