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吸血花
第十五章
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味しい御馳走よ」
 女怪はクスクスと笑って言った。
「御馳走ねえ。女の子を食べた事はあっても食べられた事はないんだが」
 背中から刀を抜きながら言った。
「あら、そうだったの。じゃあこれが初めてね」
 目を細めて笑った。
「もっとも最後でもあるけれど」
 その細めた目が光った。不気味な赤い光を放つ。
「それはどうもお嬢さん」
 役が口を開いた。そしてゆっくりと次の言葉を出した。
「いや、メアリー=スコットと呼んだほうがいいか」
 その名を出された女怪は整った眉をピクリ、と動かした。
「・・・・・・そう、知ったのね、その名を」
 女怪はその顔から笑みを消して言った。
「ええ。ちょっと調べているうちにね。貴女の人間だった頃の名前だ」
 役は一歩前に出て言った。
「父はウィリアム=スコット。名のある煉瓦職人だった。君はそのたった一人の娘だった。これだけ言えばわかるね」
「・・・・・・ええ、そうよ。私は死んでから父の心に潜り込んでいたのよ」
 女怪、いやメアリーは二人を見据えつつ言った。
「そしてお父さんの怨念が込められたあの赤煉瓦に私の心は入っていった。お父さんの心と半ば融合していたからね。そして私はここに来た。赤煉瓦の中で怨みを抱いたままね」
「そして兵学校と共に気の遠くなる程過ごしていたのか。恐ろしい執念だな」
「そうよ。そしてその怨みが花を咲かせたのよ。ほら、この花」
 右手の平を肩の高さで上に向けた。するとあの赤い花が浮かび出てきた。

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