第四十三話 一度はっきりさせようよ
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ろと言っているのだろうか。胸が潰れそうだった、私の存在があの二人を狂わせている……。
「呪縛だな、あの二人にとっては何よりも大切なものかもしれないが今となってはあの二人を縛り付ける呪縛でしかない……」
「……」
「そんな顔をするな、誰にでも大切な物は有る。私だって両親を殺されなければ帝国を変えようとは思わなかった」
十一年前の事件だったと聞いている。十一年前、私が後宮に入った年でもあった。私は十五歳、夫は十二歳、そしてラインハルトとジークは十歳……。
「皮肉だな、オーディンはミューゼル少将では無く私を選んだ。逆でも私は少しも構わなかったのだが……」
「……」
「そんな顔をするな、……ああ、さっきからこればかりだな。あの二人を引き離せばまた違ってくるだろう」
夫が今度は私を労わるような笑みを見せた。
「ジークは昇進して巡察部隊の司令に内定したと聞きましたが……」
「貴族が居なくなって逆に治安が悪化する星系も有るだろう、巡察部隊の果たす役割は大きい。ミューゼル少将に頼ることなく自分の判断で仕事をする事になる、少しは変わるんじゃないかな。私も中佐に昇進した時に巡察部隊の司令を務めたが色々と勉強になった。楽しかったな」
「……」
「ミューゼル少将については未だ検討中だ。総司令部に置くか、それとも外に出すか……。フェザーンに行かせるのも良いかもしれない、帝国とは全く違うところだ、視野も広がるだろう……」
本当にそうだろうか……、目障りな二人を遠ざけるのが目的では……。思い悩んでいると夫が“アンネローゼ”と私の名を呼んだ。
「アンネローゼ、あまり自分を責めるな」
「……」
夫は視線を伏せカボチャのクリームスープを飲んでいた。
「あの時はああするしかなかったんだ。お前には他に選択肢は無かった。その事を悔やむんじゃない」
「……はい」
十一年前、後宮に入った事だろう。確かに他には選択肢は無かった……。
「ここに来たこともだ」
「……」
「お前には他の選択肢は無かった。そして私にも選択肢は無かった。誤解の無い様に言っておくが私はあの事件に関してお前に責任が有ると思ったことは一度も無い。そういう意味では私の所にお前が来たことは不当だったと思っている。ミューゼル少将のいう通りだ、お前は加害者じゃない、犠牲者だ」
「……」
夫はもうスープは飲んでいない。でも下を向いたままだ、何を言おうとしているのだろう。
「不当である以上、それは解消されるべきだと私は思う」
「それは、どういう意味で仰っているのです?」
私の問いに夫は視線を上げて私を見たが直ぐに逸らせた。
「こんな事は言いたく無かったが一度はっきりさせた方が良いだろうと思う」
「……」
「お前が今でも不当だと思っているなら、私と別れる事を望
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