第四十三話 一度はっきりさせようよ
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が浮いていた、他者に関心を向かせるには離した方が良いだろうな」
「……」
「私に不満を持つのは許せる、面白くは無いがな。だが自分が総司令部の一員であるという自覚は持って欲しいと思う。個人的感情から軍の勝利を喜べないなど何を考えているのか……」
ごく平静な口調だったが内容は厳しかった。夫は弟達を組織の一員としての自覚が無いと言っている。だが未だ見捨ててもいないのだろう。
「申し訳ありません、弟達が……」
私が謝ると夫は首を横に振った。一度口を開きかけ、私を見て口を閉じた。そして視線を皿に落としフォークとナイフを置くとライ麦パンを一切れ口に運んだ。
「どうかしたのですか、遠慮せず仰ってください」
私が言うと夫はちょっと困ったような表情を見せてから“話しておいた方が良いか”と呟いた。
「多分あの二人は軍幼年学校に入ってからは周囲から受け入れられなかったのだと思う、皇帝の寵姫の弟として色眼鏡で見られその所為で自然と自分達は周囲から受け入れられない存在なのだと思ってしまった、周囲には敵しかいないと思い込んだ……。十歳の子供には厳しい環境だ」
「そんな……」
夫が首を横に振った。
「アンネローゼ、お前の所為じゃない。周囲が敵だらけなら用心深くなるか攻撃的になるかだ。あの二人は攻撃的になる事を選んだ、お前が選ばせたわけじゃない」
夫は私を労わってくれている。でも間違いなく責任は私にも有るだろう。あの二人を軍幼年学校に入れるように頼んだのは私なのだ。
「申し訳ありません、弟達には私から注意しておきます。貴方にも敬意を払うように言っておきます」
「……多分、言っても無駄だろうな」
「!」
驚いて夫を見た。夫は無表情にジンジャーエールを飲んでいた。
「あの二人にとってお前と過ごした時間は何物にも代えがたい時間だった。だがそれを先帝陛下に奪われた、許せなかっただろうな。あの二人はお前を取り戻すと決めた、そして幸せにすると……。そうする事であの時間が返ってくると思っているのではないかな」
「……」
夫は茹でたジャガイモを口に運んでいた。何時もなら美味しそうに食べるジャガイモを無表情なまま食べている。その事が二人に対する夫の感情を表していると思った。あの二人が夫に対して面白く無い感情を持っているとすれば当然だが夫も二人の事を面白く思っていないのだろう。“私に不満を持つのは許せる、面白くは無いがな”。いつか許せなくなる日が来るのだろうか……。
「あの二人にとって私はお前を不幸にしている悪い夫でしかないのだ。多分、私から奪い返して自分達の手でお前を幸せにする、そう考えていると思う。説得をするのは良いがあまり期待はしない事だ、辛くなるだけだろう」
夫が大きく息を吐いた。夫は私を気遣っているのだろうか、それとも現実を見
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