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銀河英雄伝説〜悪夢編
第四十三話 一度はっきりさせようよ
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有ります」
「ミューゼル少将の事かな」
こういう事には夫は鋭い。
「はい、昇進しないと聞きました。いえ、その事に不満は無いんです。貴方が不当な事をするとは思いません。ただ理由を教えて頂けないでしょうか、弟たちに訊いても答えてくれなくて……」

怒るか、嫌がるかと思ったが夫は少し考えるそぶりを見せると“そうだな、説明した方が良いだろう”と言った。やはり弟の一件にはそれなりの理由が有るのだ。
「問題が起きたのはレンテンベルク要塞を攻略した時だった。向こうにはオフレッサー上級大将が居た……」

夫はオフレッサー上級大将が夫を挑発した時の様子を教えてくれた。最初は侮辱の対象は夫だった、だがオフレッサー上級大将は侮辱が夫に通用しないと見ると侮辱の対象を私にまで広げた。夫は笑い飛ばしたがラインハルトはそれに反応してしまったらしい。

「お前が侮辱された事が許せなかったのだろう。自分にオフレッサーの相手をさせろと言いだした。ロイエンタール、ミッターマイヤー両提督が通信で繋がっている時にだ」
「……」
「皆が思っただろう、私情で動く奴、周囲に配慮出来ない奴と」
夫の言う通りだ、溜息が出た。

「オフレッサーだがあの男は裏切り者として味方から処刑された。本人は不本意の極みで死んだだろう」
どういう意味か判断が出来なかった。もしかすると受けた侮辱は返した、私の事を大事に思っているのだという事なのだろうか。

「ミューゼル少将を昇進させることは出来ない。そんな事をすれば皆が私に不信を抱くだろう、軍の統制にも影響が出る。それに中将に昇進すれば一個艦隊を指揮する資格を持つ。百万人以上の人間の命に責任を持つ立場に立つのだ。皆が言うだろうな、彼にそんな資格は無いと……」
「……」
厳しい言葉だ、夫は憂鬱そうな表情をしている。

「能力は有ると思うのだがその能力を使いこなせていない、使いこなすだけの冷静さに欠けていると思う。それを身に着けるまでは昇進はさせられない、危険すぎる」
夫が首を横に振った。やはりそうかと思った。ラインハルトには何処か危ういところが有ると思っていた。それが夫の前で出てしまったのだ。

夫にはそれは許せない事なのだろう。ラインハルト達が私に話さないのもオフレッサー上級大将が侮辱したのが私だから、そして非はそれに反応した自分達に有ると理解しているからに違いない。彼らはそれを言えば私が傷付くと思ったのだ。

「ジーク、いえキルヒアイス少佐と離れ離れにすると聞きましたが……」
抑え役に必要ではないのか、そんな思いで聞いてみた。だが夫はまた首を横に振った。夫の判断ではジークは抑え役にならないらしい。
「手元に置いてみて分かった。あの二人は互いに寄りかかっている。その所為で他者を必要としない。……総司令部でもあの二人だけ
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