第十四章
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った。
「ええ。どうか読ませて下さい」
本郷は喜んで答えた。彼は英語が堪能なのである。
「はい。それでは私の官舎にどうぞ」
学校の敷地内に置かれているマクガレイ大尉の官舎に案内される。そしてそこで何冊もの本を手渡された。
「どれも分厚くてとても読みがいがありますよ」
大尉はそう言うと悪戯っぽく笑った。実際にずしっとくる重さだった。
「有り難うございます。それでは喜んで」
本郷は礼を言って部屋に戻った。そして二人でその書を読みはじめた。
「こうして読んでみても本当に色々と歴史のある場所ですね」
本郷が英文の本を苦労して読みながら言った。彼は役程英語が堪能なわけではない。
「うん。まあ僕はこれだけはあると思っていたけれどね。ところで一つ面白い事がわかったよ」
「?何ですか?」
「うん、これだよ」
役は本郷にその辞典の様な厚い本の一ページを見せた。
「ここを読んでみて」
そこにはイギリスで兵学校建設に使われた赤煉瓦を実際に作った職人達について書かれていた。
「へえ、こんなものまで調べられているんですか」
これには本郷も驚いた。
「正直僕も驚いているよ。そこに興味深い人がいるよ」
「興味深い人、ねえ」
本郷はそこに目を通した。すると一人海軍と実に因縁深い関係を持つ者がいたのである。
その人は名のある煉瓦職人だった。王宮の関係者にもその名を知られ王室の宮殿や別邸の建設にも関わる程の人物であった。彼は平民でありながらその腕で多くの人から尊敬されていた。
だが彼の生活は質素であった。報酬というものにさ程興味を持たなかった。最低限の生活さえ出来れば満足であった。彼の願いはただ一つ、良い煉瓦を造る事だけであった。
彼は結婚してすぐに妻を失った。妻との間には娘が一人いるだけであった。長く豊かな金髪を持つ美しい娘だったという。
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