反董卓の章
第2話 「全部、俺のせいか! くそっ……!」
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その女性から次第に街の住民全てが、入れ替わり立ち代りで我々へ食事を届けてくれた。
ようやく穀物の収獲になり、俸給が出たことで皆に感謝しつつ辞退するようになったが……今でも時折、鈴々にだけは手作りの食事が届けられている。
「その中でわかったのだ。武人として守るべき者としていた民。その民にこそ、我々は護られているのだと。私達武人と民。それはどちらかが護るのではなく、互いが依って立つ者なのだと」
「……そうだな。その通りだ」
民とは守るだけにあらず。
互いに護りあうモノ――
そうだ。確かにそうだ。
私達は民を守り――私達は民に護られている。
「だからこそ、一方的に……民を守る反面、その対価をもらうのは当然と思っていたあの頃の私は……それがわかっていなかった」
「星……」
「だからあの時……伯珪殿が辛酸を嘗めてでも護ろうとしたその姿を。『覇気がない』と評して、その元を去った私に……何が言えるというのだ!」
星が持つ盃を握りしめ、その手の中で盃が割れる。
そして尖った破片は、星の握りしめる手を傷つけ、中に満たされていた酒に混じった血とともに、その手から溢れだした。
「……私には、主が援助をするために四苦八苦する姿にも! 桃香様がそれを苦渋の決断として断念する姿にも! 何も口を出すことなど、できはしないのだ……」
「星…………」
その時、星の顔は月明かりに煌々と照らされており、はっきりとその顔がみてとれた。
その苦渋の顔には涙一つ見えなくても……私には見えたのだ。
血の涙を流しながら、自分の過去を悔い、そして友人の境遇と自身の無力に嘆く――
そんな一人の武人の慟哭が。
―― 董卓 side 涼州長安 ――
「月、まずいことになったわ……洛陽の宦官たちが、殺されたそうよ」
「え!? どういうこと?」
「袁紹よ……何進大将軍の仇として、その右腕だった袁紹とその仲間に殺されたわ」
「そんな……」
詠ちゃんの言葉に、私は顔を伏せます。
殺して殺されて……そんなことが宮中で罷り通るなんて。
それじゃあ、族の人たちと変わらないじゃないですか……
「それだけじゃないの……落ち着いて聞いてちょうだい。袁紹の手から逃れた宦官がいて……その人物は、月を頼ってきているの」
「え? 私に……? 誰?」
「…………段珪、いえ、正確には張譲よ」
……え?
張譲さんが、私を頼って……?
「わかってる。張譲がなぜ月を頼るのか……でしょ。どうやら一緒に洛陽から逃れてきた方の推挙らしいの」
「逃れてきた方……?」
「……少帝陛下と、陳留王様よ」
「!?」
新しく皇帝陛下になられた小帝陛下と、その弟
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