反董卓の章
第2話 「全部、俺のせいか! くそっ……!」
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にも失礼なことを続ける劉虞に対して、全く反抗を示さなかった。劉虞が宗正であること、幽州州牧であること、そして……自分の上司であることを理由に、だ。私はあの時……それが許せなかった」
「………………」
「伯珪殿は漢王朝に忠誠を誓っている。それはわかる。わかるが……私にはその姿を『覇気がない』と断じていたのだ」
「星……」
「今ならわかる。伯珪殿は、民衆を……北平の民、幽州の民を想って、その苦渋を耐えているのが。だが、当時の私には……それがわからなかった」
そう言って、自分の盃を煽る星。
飲み干したその顔は……まるでとても苦い酒を飲み込んだようだった。
「この梁州に来るまで……恥ずかしながら私には、弱い者が見えていなかった。いや……『民』というものが見えていなかったのだ。己の槍一つでこの乱世を乗り切る……それに足るだけの主に巡りあう。それしか考えがなかった……」
「………………」
「この梁州に来て、初めて分かった。国の全ては……民によって支えられていると。それを本当の意味で分からせてくれたのが……桃香様と主だ」
「本当の意味……?」
本当の意味とは……なんだ?
「……最初にこの梁州に入った時、まず驚いたのは民の笑顔だった。このような場所は、大陸のどの場所にもないものだ」
「……うむ」
「そして桃香様とお会いして、その内情を知った。覚えているだろう? 最初のじゃがいもの収穫前後、この国の中枢である場所が……どんな生活をしていたか」
「……ああ。あの時はきつかったな。一日一食、着ているものは何度も着てほつれた服。城内にあった売れるものは全て売り払って、その資金で市場の設置費用を捻出して……借財にしても、商人に頭を下げねばならなかった」
「そうだ……桃香様にも言われた。『しばらくは俸給も出せない、それでも私の仲間になってくれるのか』……あの時の、桃香様の申し訳なさそうな顔は、一生忘れんだろう」
「……ああ。私も鈴々も……そして朱里や雛里にも頭を下げていた。『皆のために、もう少しだけ我慢して欲しい』と……」
そう……今はご主人様のお陰で、資金は豊富。
借財も返して、その膨大な資金力を背景に、新たな事業でさらに資金を増やしている。
糧食も初期の先行投資により、大増員した約四万の兵を養ってなお、余裕がある。
だが、それに至る道は……つらかった。
「私を含め、俸給が全くない状態の官職の者達。だが、それを救ってくれたのは、ほかならぬ民からの献上品だった。覚えているか、愛紗? 腹を減らした我々のためにと、街の皆が食事を運んでくれたことを」
「……忘れるものか。あの時の食事の暖かさ。例え粟や稗のごった煮であろうとも、あの旨さは生涯忘れん」
腹をすかした鈴々の為に、と持ってきた一人の女性。
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