第十一章
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なりそうであり責められる謂れは無い。組織とはそういった一面を持つ事は事実である。だから組織によっては合わない人もいる。ただ軍隊というものはそれが他の組織よりも強いのである。
だからこそ合わない人物も多い。体育会系のノリについていけない人や厳格な規律に馴染めない人、暴力に耐えられない人。特に暴力に耐えられない人にとってはつらいものであろう。今だに暴力教師などという社会にとって悪性腫瘍でしかない輩が多々いる嘆かわしい現状であるがこの時代こうした暴力は常識であった。暴力教師とは似て非なるものではない。彼等はこの時代の常識に従って拳を振るっていたのであって暴力教師の様に自らの感情や嗜虐性を抑えられずに無意味な暴力に走る輩共とは根本から異なるのである。
だがその暴力に耐えられない人というものは何処にでもいる。何時の時代にでも。こうした人達にとってそれは耐え難い苦しみであり何時それが振るわれるか怯える日々が続く。
これに耐えられるうちはいい。だが耐えられなくなった場合事態は悲劇となりかねない。
「・・・・・・まあ何時の時代にでもある事ですけれどね」
「ああ。悲しい事にね」
役は目を閉じ静かに頷きながら言った。
「そうした歴史もここにはあるんですね」
「そういう事になるね。この建物は伝統と共にそうした陰の歴史も併せ持っているんだ」
役はその言葉で説明を締めくくった。
「ただここまで聞いて一つ気になる事があるんですけれど」
「何だい?」
「あの吸血鬼は女ですよね。ここはつい最近まで男ばかりのところだったんじゃないですか」
「そう、問題はそこだ」
役が指をビシッと振りながら言った。指が一振りしたところで止まる。
「出て来るのが死霊だったら話は解かるんだ。実際この学校はそういった話が多いようだしね」
「軍の施設には付き物ですね」
「まあね。特にここは世界有数の心霊スポットでもあるし」
あまり知られていないが事実である。
「しかし女の霊、ですか?何か違うと思いますけれど」
「そうなんだ。私も考えているんだが妙に引っ掛かる」
役は首を傾げた。
「大体蔦や棘、花びらを使うところを見ると花の怪だが違うようなことを言っているし。赤煉瓦というのなら死霊か何かだろうがやはりそれでもなさそうだ」
「この学校に詳しい人に聞いてみますか?」
「そうだな、それがいい」
こうしてこの学校の事に詳しい人物に話を聞く事になった。教官の一人斉藤准尉という人である。
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