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吸血花
第十章
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の銃弾を受けてもらうぞ」
 照準を女怪の胸に合わせる。
「あら、私が植物の変化ですって?」
 役の言葉に対し皮肉混じりに言った。
「他にどう見ろというんだよ、花から変化してるっていうのに」
 本郷が言い返した。
「所詮その程度の知識しか無いの。とんだヘボ探偵ね」
「生憎今まで失敗した仕事は無いけれどな」
 本郷は更に言い返した。
「それは今までの相手が大した事なかったからでしょうね。今の仕事で失敗してあの世に旅立つことになるわ」
「それはどうも」
 女怪の言葉に今度は役が返した。
「しかしその蔦でどうして植物の魔物でないと言えるのだ?」
 役が照準をその頭部に当て直しながら問うた。
「それはあの赤煉瓦を見る事ね」
「赤煉瓦?」
 その言葉に二人は眉を上げた。
「そう、あの赤煉瓦をよく調べてみることね。そうすれば私が何なのか解かるかも知れないわよ」
 女怪はそう言うと左手を肩の高さで掲げた。
「今日のところはこれでさようなら。次に会う時までその血と命、預けておくわ」
「むっ、待て!」
 二人が叫び攻撃を仕掛ける。だがそれより前に女怪の身体を赤い無数の花びらが包んだ。
 花びらは吹雪となり彼女の身体を包んだ。そして彼女はその中に姿を消した。
「消えたか」 
 花びらが全て地に落ちた時女怪の姿は無かった。その花もまるで幻影の様に消えていった。
「今日のところは仕留め損ないましたね。次に会った時にしますか」
「ああ。しかし気になる事を言っていたな」
 役は考える顔をした。
「ええ、赤煉瓦がどうとか」
 本郷も眉を顰めた。
「どういう事だ。あの建物に何か秘密があるとでもいうのか」
 二人はふと左手を見た。そこには闇夜の中月の光に照らし出される古い欧風の建物があった。

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