暁 〜小説投稿サイト〜
吸血花
第十章
[2/3]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
からないけれど要するに私の攻撃を読んでいるということね」
「まあそういう事だ。もう貴様の蔦は通用しないぞ」
「それはどうかしら」
 それに対して女怪は笑った。
「強がりか。プライドの高い吸血鬼らしいな」
「強がり?違うわね」
 女怪は言い返した。
「知っているのよ。貴方の確実な死を」
「それは七十年後か、八十年後の話か?少なくとも今の話じゃないな」
「いえ、今よ」
 女怪の腕が上がった。すると床から棘が出て来た。
「ムッ!?」
 それは地走りの要領で本郷に向かって来る。本郷はそれを横に見切ってかわした。
「甘いわね」
 そこへ蔦が来た。本郷の右肩をかすった。
「失敗したわね。その首に突き立てて吸ってやろうと思ったのに」
「お生憎様・・・・・・」
 軽口を叩くがその顔は笑っていない。頬を冷や汗が伝う。
「けれど今度は外さないわ。覚悟するのね」
 女怪は笑った。勝利を確信した笑みだった。
「それはどうも」
 表面上は軽口を叩く。だが内心はまだ冷や汗が流れている。
(まずいな、これは)
 一つだけなら何無くかわせる。だが複合攻撃となると厄介だ。
(見切りは駄目だな。跳ぶしかないか)
 棘が来た。それが地走りしてこちらに来る。
「はっ!」
 本郷は跳んだ。こうするしかなかった。
「やはり!」
 女怪の爪が伸びた。だが本郷はそれを刀で打ち払った。
「何の!」
 だげそれで終わりではなかった。もう一撃来た。
「なっ!」
 それは左腕だった。刀には右の蔦を打ち払った衝撃がまだ残っている。こちらに戻すにはまだ間がある。
「かかったわね」
 それを見て女怪は笑った。蔦はそのまま一直線に本郷の首筋へ向けて伸びていく。
(終わりか・・・・・・!)
 さしもの本郷も観念した。その時だった。
 何かが左の蔦を撃った。その衝撃により蔦は大きく弾き飛ばされた。
「誰っ!?」
 咄嗟に辺りを見回す。危機を脱した本郷は両足を屈めて着地した。
「だらしがないな、本郷君」
 本郷から見て右手、女怪から見て左手から声がした。二人はそちらへ顔を向けた。
「遅いですよ、全く」
 本郷がその声の主に対し微笑みながら言った。
「申し訳ない、手こずったものでね」
 声の主もそれに対し微笑みをもって返した。コートを着た男がそこにいた。手には拳銃を持っている。昼にフェリーで江田島に来たあの男だ。月の黄金色の柔らかな光を背に立っている。
 この男の名は役 清明(えんのきよあき)という。本郷と一緒に京都で探偵を営んでいる。言わば彼の相棒である。
「吸血鬼と聞いていたが意外だな。アンデッドではなく植物の変化とは」
 役は銃を構えながらその女怪と対峙した。
「だがそうだからといって対応が変わるわけじゃない。遠慮なくこの銀
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ