第百四十一話 姉川の合戦その五
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「彦左衛門殿は殿を御願いします」
「そうでしたな、殿が」
「はい、殿のお守りがです」
それが大事だというのだ。
「ですからここは」
「では今は」
「そうです、確かに当家は武辺者が多いですが」
だがそれでもだった、一人で朝倉家を支えようとしている真柄を見てだ、本多はいぶかしむ目でこう言ったのだった。
「彦左衛門殿と平八郎殿、それにですな」
「半蔵か」
「御三方しかおられませぬ」
これが本多の見立てだった。
「他の方ではどうしても」
「無理がありますな」
大久保が言う。
「出来ればそれがしが行きたいですが」
「ですから彦左衛門殿は」
家康を守って欲しいというのだ、何しろ家康自ら刀を抜いてそれで大久保の守りを受けている程だ、それではだった。
本多も本音では大久保に行ってもらいたい、だがそれでもなのだ。
彼は家康を守らねばならなかった、そして。
本多忠勝もだった、彼は今は兵を率いている。やはり蜻蛉切を手にして戦っているのだ。最後の半蔵もだった。
「半蔵殿も」
「うむ、信長殿との連絡役だからな」
「あの方しかおられませぬ」
だからだった、三人共真柄に向かわせられなかった。これではだった。
「ですから今は」
「ううむ、四天王の他の者ではな」
酒井や榊原、井伊も今はそれぞれの持ち場を持っている。それではとてもだった。
真柄の相手を出来る者はいなかった、だがだった。
ここで二人の武者が姿を現わした、彼等はというと。
匂坂兄弟だった、徳川家の武辺者の兄弟である。兄が式部、弟が五郎次郎だ。
その彼等が家康の前に出てだ、こう名乗り出たのだ。
「殿、では我等が」
「我等があの者を討ち取ります」
「出来ればあの者を生け捕りにしてです」
「殿の前に引き立てます」
「頼むぞ」
家康は真柄のまさに仁王ンお如き巨体で暴れ回る姿を見ながら匂坂兄弟に応えた。
「あ奴をどうにかすればな」
「はい、その時はですな」
「この戦勝てますな」
「必ず出来る」
だからだと言ってだ、家康は彼等を行かせた。匂坂兄弟はすぐに今も徳川の兵達を吹き飛ばしている真柄に向かった。
真柄はその彼等を見て言った。
「御主達、わしを討ち取りに来たか」
「いや、出来れば生け捕りにする」
「そうさせてもらう」
こうだ匂坂兄弟は言ったのだ。
「出来ればな」
「そうしてみせる」
「面白いのう、ではわしも御主達を生け捕りにしてじゃ」
真柄もだ、その巨大な刀を手にして匂坂兄弟に述べる。
「義景様の御前に引き立ててやろうぞ」
「ふん、ではな」
「どちらが勝つか勝負じゃ」
兄弟はそれぞれ左右に動いた、そのうえで真柄を囲む様にしていた。その真柄はというと。
巨大な刀を手に二人を斬らんとする、そ
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