第百四十一話 姉川の合戦その二
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「朝倉を破るぞ」
「見たところ朝倉の軍勢は今飛び起きたところですな」
「こう早く戦になるとは思わなかった様です」
「起き抜けでしかも飯も食っておらぬ様です」
「それではですな」
「倍の敵といえど勝てる」
そうした碌に準備も出来ていない兵達ならばだというのだ。
「余裕を与えず一気にいくぞ」
「はい、それでは」
「今から」
こう話してそうしてだった、徳川軍は家康を先頭にして一丸となって突進する。その家康の周りにだった。
まず四天王達が来た、酒井が家康の前に来て言うのだった。
「殿、迂闊に前に出られては危険です」
「いや、戦となればな」
「そうして自ら出られるのは殿の悪い癖ですぞ」
酒井は馬で駆けながら家康に対して言う。
「我等もおります、お任せ下され」
「ではか」
「はい、先陣はそれがしが務めます」
「いや、それがしです」
「それがしが」
榊原と井伊も名乗りをあげる、そして本多もだった。
蜻蛉切を手にして突き進む、目の前の朝倉の軍勢を見据えながら彼もまた家康に対して言う。
「殿、我等に武勲をお与え下さい」
「それをか」
「はい、そうして頂きたいのですか」
「やれやれ、そう言われるとな」
家康も苦笑いになる、そして遂にこう言った。
「ではな」
「それでは」
「今より」
四天王だけではない、家康の手足である三河武士達が前に出てだった。そうして。
朝倉家の軍勢に突き進む、そうして慌てふためく彼等に雪崩れ込んだ。
朝倉家の軍勢は早速徳川家の軍勢に押されていた、その彼等に対して。
浅井家の者達は違っていた、彼等は織田家の軍勢が朝早く来ることがわかっていた。
それで彼等も既に起きていて飯を食っていた、そのうえで織田家の軍勢に一直線に進んでいた。
川はあっさりと渡った、織田家の陣が見えてきた。
「よし、進むぞ!」
「はい、では!」
「今より!」
「このまま止まるでないぞ!」
長政は自ら槍を手にして馬に乗り軍の先頭に立っていた。全速で駆けながら言うのだ。
「敵陣は破りそうしてじゃ」
「織田軍の本陣ですな」
「そこまでですな」
「そうじゃ、進むぞ」
そうしてだというのだ。
「敵陣を破るぞ」
「はい、わかっております」
「それでは」
家臣達も応える。
「そして右大臣殿の御首を」
「挙げるのですな」
「そうするぞ」
絶対にだと言ってだ、そして。
そのまま突き進む、まずは坂井が預かる第一の陣だった。
織田家の陣はどれも横に長く縦に短かった、その彼等に浅井家の軍勢一万が魚鱗となって雪崩れ込む、数は然程違わなかった。
だがその陣形の違いが出ていた、横に長く縦に短い陣形に魚鱗の陣で突っ込むとあえなく突破された、実際に坂井もだ。
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