第四十三話 白蛇その六
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「焼酎よりも強くて」
「味も癖があるわよね」
「飲むともう胃が焼けるって感じで」
「水割りにしても強いわよね」
「どうもあんた達には合わないみたいね」
茉莉也は二人の会話から彼女達にウイスキーは合わないと判断した。
「というかアルコール強いお酒駄目?」
「焼酎までならいけます」
「私もです」
愛実と聖花はこう茉莉也に返した。
「けれどウイスキーは」
「お兄ちゃん達が飲んでますけれど」
「うちじゃお父さんが時々飲むんですけれど」
「ちょっと」
「まあねえ、お酒も合う合わないがあるからね」
そのことを踏まえて言う茉莉也だった。
「アルコール濃度がね」
「じゃあいいんですね」
「ウイスキー飲めなくても」
「全然よ。お酒はどれでもね」
飲めればいいというのだ。
「そういうものだから。とにかくね」
「はい、とにかくですね」
「今から小学校の裏に行ってですね」
「あそこに蛇の洞があってね」
「そこが、ですね」
「泉かも知れないんですね」
「そうなの、あそこに入ってね」
そしてだというのだ。
「あの中を進んでいって何が出て来るかよ」
「泉かも知れない」
「そうなんですね」
「そう、まあその前にね」
茉莉也は今も右手の中にあるウイスキーのボトルを観ながら語る。
「うわばみさんにね」
「挨拶してからですね」
「それからですね」
「うわばみさんはあそこを護ってるのよ」
それが彼の仕事だというのだ。
「もう長い間ね」
「ああ、白蛇としてですね」
「そうしてるんですね」
二人はうわばみの仮の姿から話した。
「何か普段はその姿なんですよね」
「あの大蛇の姿じゃなくて」
「そうそう、前に話したけれどね」
茉莉也も二人にこう返す。夜の小学校も静まり返っていて閑散とした赴きさえある、その静かな世界の中を観ながら言うのだった。
「十メートルの巨体でいつもいたらね」
「目立つからですね」
「それもどうしようもなく」
「大騒ぎになるわよ、それこそ」
外に、それも学校の中にそこまでの大蛇がいたらというのだ。
「人間なんて丸呑みに出来る大きさだからね」
「実際ニシキヘビって人間丸呑みにしますよね」
「それで食べるんですよね」
「人間どころかね」
茉莉也の話はさらに怖いものになる、それはどういうものかというのだ。
「もう家畜でもね」
「人間より大きなのもですか」
「丸呑みなんですね」
「そうよ、そうするのよ」
この恐ろしい現実の話をする、実際に熱帯では人間だけでなく家畜も時折大蛇の餌食になってしまう事件が起こる。
「だからあの姿でいられないからね」
「隠れることは。妖怪さん達の十八番の」
「出来ることは出来るわよ」
一応だ、それは出来るというのだ。
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