第一章
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て体操を始めた。
ラジオ体操とは違う。かなり独特の動きだ。『海上自衛隊体操』というものである。
隊舎を見る。時々窓から何か落ちてくる。毛布や枕である。隊舎を出る際畳み方が悪かったりすると落とされるのである。
これは幹部候補生学校で『赤鬼・青鬼』と呼ばれる教官達が行なっている。彼等の役職は『幹事付』。候補生達の生活指導全般を監督及び指導する。
毛布や枕が落ちるのを候補生達は体操をしながら黙って見ている。ひょっとしたら自分のものかも、そう不安を抱く者もその中にはいる。だが彼等は今動けない。今は体操をしなければならない。それが終わったら腕立て伏せ等の体力錬成、そして掃除。彼等の生活は朝から忙しい。
毛布や枕はまだ落ちてくる。それを見る候補生達。顔や態度には出さないが不安そうである。その落ちるものの中でいっぷう変わったものが落ちてきた。
「!?」
それは枕ではなかった。かなり大きかった。毛布か、いや違う。平べったくはなかった。それにそれは窓から落ちてきたのではなく隊舎の屋上から落ちてきたのである。
「何だ、あれは」
グラウンドは騒然となった。教官達が屋上から落ちてきたそれへ一斉に駆け寄る。そしてそれを見て皆顔を蒼ざめさせた。
「これは・・・・・・」
それは人間の屍だった。既にその両眼に生気は無い。肌も蒼白となっている。
その屍で奇妙な点は異様に軽いことだった。身体は干乾びミイラの様であった。まるで全身から血が吸い取られたように。
「?この匂いは・・・・・・」
鼻のいい教官の一人がふと辺りに漂う香りに気付いた。それはダリアに似た花の香りだった。
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