第九章
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を伸ばしてきた。その中の数本を取る。それは槍になった。赤い槍であった。
「これでな。一思いに貫いてやる」
「槍でか」
「そうだ。刀より槍の方が強いのは知っているな」
槍を前に構えながら言う。
「知らないな」
本郷は言い返した。
「強い方が勝つってのは知っているけれどな」
「そう、その通りだ」
ここで別の者の声がした。
「強い者が勝つ、それは真理だな」
「何者だ」
「やっとおでましですか」
本郷はその声を聞いて苦笑いを浮かべた。
「遅いですよ、本当に」
「済まない、本郷君」
その声は本郷の言葉に対して謝罪した。
「裏手から回っていたのでね。手間をとった」
そして闇の中からもう一人の男が姿を現わした。コートを羽織った背広の男である。右手に銃を構えている。役清明であった。
「貴様は」
「彼の相棒でね」
役は本郷に顔を向けながら言った。
「役清明という。以後お見知りおきを」
「人間の名を覚えるつもりはないがな」
「ほう」
役はそれを聞いて思わせぶりな笑みを浮かべた。
「人間の名前はどうでもいいということだ」
「当然だ。糧の名なぞ覚えてどうなるか」
「確かに。パンにいちいち名前をつける者はいない」
役はそう言いながらアルノルトに歩み寄ってくる。
「だが御前は一つ間違いをしている」
「何だ」
「人間は御前の糧なぞではない」
彼はここでこう言った。
「人間は御前の糧になる為に生きているのではないのだ。自分の夢の為に生きている」
「戯れ言を」
「戯れ言と言うか。確かに御前にとってはそうだ」
役は言った。
「だが人間にとってはそれが真理だ。それを今教えてやる」
そう言いながら銃をアルノルトに向ける。そしてそれを放った。
「銀の銃弾か」
「そうだ」
本郷は答えた。
「これをかわすことはできまい。貴様が魔性の者ならばな」
「そうだな」
意外にもアルノルトはそれを認めた。
「魔性の者なら銀の力にあがらうことはできぬ。しかし」
不敵な笑みを浮かべた。
「それは普通の魔性の者であったならばだ。私程の者ならば」
槍を投げた。それを銃弾に当てる。
「こうしてそれを打ち消すことができる」
そして銃弾を槍で相殺したのであった。
「ムッ」
それを見た役が声をあげた。
「これならどうだ」
「まさか銀の銃弾を消すとは」
「そこの男に言ったが」
アルノルトは本郷に顔を向けながら言う。
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