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銀河英雄伝説〜悪夢編
第四十二話 オーベルシュタイン、俺が可愛がってやるぞ
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倒す機会を得るための擬態……。

夫はヴェストパーレ男爵家、シャフハウゼン子爵家に対して処分をしなかった。その事で礼を言っても“お前には関係ない”と言った。あれは私が頼んでも処罰する時は処罰する、情を絡めることは無い、口出しは無意味だという事なのだと思う。夫は私に政治に関わるなと言っている。冷徹で非情、そして用心深い、それが夫の本当の姿なのだ。

ラインハルトは夫が貴族達に良い様に使われている、阿っていると言った、そして歯痒いと。夫がそれを知ったらどう思ったか……。叱責しただろうか? 私は何らかの処罰をしたのではないかと思う。そして心の中で、思慮分別の無い愚か者、そう思ったのではないだろうか。

ラインハルトに視線を向けた。面白くなさそうな表情は変わらない。もしかするとラインハルトは自らが帝国の第一人者になって改革を行いたかったのかもしれない。ラインハルトには夫が競争相手に映っているのだろうか……。考え込んでいるとラインハルトが“姉上”と声をかけてきた。

「どうしたの?」
「今度の論功行賞で自分は昇進出来ないそうです」
口惜しそうな表情をしている。
「どういう事? 勝ったのに昇進できないって」
「……」
問い掛けても無言のまま唇を噛み締めている。ジークに視線を向けても目を伏せて私を見ようとしない。

「それとキルヒアイスと離れる事になりました」
「ジークと?」
「ええ、キルヒアイスは中佐に昇進して巡察部隊の司令になる事が内定しています」
「……一体何が有ったの?」

二人の事を決めたのは夫だろう、一体何が有ったのか……。二人は何も答えない。多分、この二人は夫を怒らせた、失望させたのは間違いない。一体何が有ったのか……。




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