第四十二話 オーベルシュタイン、俺が可愛がってやるぞ
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てヴァレリーを呼び戻すと彼女が“宜しいでしょうか”と声をかけてきた。
「処分が少し厳しいのではないでしょうか、本人だけでなく家族にまで処分が及ぶのは……」
「甘いくらいですよ。本当に厳しければ後腐れなく全部処断しています」
「……」
納得していないな。俺だって好きでやっているんじゃないんだが……。そうか、俺が恨みで処分を厳しくしているのではないか、そう思っているのか……。
「貴族という特権階級を無力化しなければならないんです。酷いと言われてもやらざるを得ません。あの馬鹿げた連中の復活を許してはならない、大佐だってあの連中の酷さは分かっているでしょう」
「それは……」
渋々といった感じで頷いた。
「酷い目にあったからといって恨みでやっているわけじゃありません。自由惑星同盟に生まれた大佐には少し受け入れ辛いかもしれない。しかし同盟には身分制度が無く特権階級が無かった、その弊害も。だから今一つ理解できないのだと思います。これに関しては口出しは無用です。大佐も口外しない方が良いでしょう」
「それはどういう意味でしょうか」
訝しげな表情だ、やっぱり分かっていないんだな。
「多くの平民達は貴族達に泣かされてきたんです。その期間は五百年ですよ、五百年。平民達は連中の没落をいい気味だと思っています。それを弁護するような事を口にするのは大佐のためにならない、そう言っているのです」
俺の言葉にヴァレリーは少し表情を強張らせて“分かりました、以後は気を付けます”と言った。
やれやれだな、そう思っているとTV電話から受信音が流れてきた。番号は二つ、どうやら連中か。受信するとヴェストパーレ男爵夫人、シャフハウゼン子爵夫人がスクリーンに映った。二人が口々に俺に礼を言う、どうやらアンネローゼから処分は無いと聞き出したのだろう。
「貴女方に処分が無いのはアンネローゼとは無関係です。私は私情で処分を下す様な事はしない。私は貴女方のアンネローゼへの友誼が偽りの友誼だとは思いたくない。だから貴女方にお願いしたい、アンネローゼを政治的に利用する事はしないで欲しい。そしてこれからもアンネローゼの良き友人でいて欲しい」
俺の言葉に二人は必ずそうすると答えた、決して彼女を利用する事はしないと……。
通信が切れると思わず溜息が出た。ヴァレリーが俺を変な目で見ている。
「何です、大佐」
「いえ、権力者になるのも大変だと思ったのです」
本当は冷やかしたいんだろう、俺がアンネローゼを心配していると。拝領妻だけど仲がいいじゃないかと。
「決して楽では無いし楽しくも無い。それを理解できない人間は権力など求めるべきではないと思いますね」
女房の交友関係にまで気を配らないといけないなんて馬鹿げているだろう。でもその馬鹿げた事が権力者には必要なんだ
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