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港町の闇
第六章
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中国における彼の信仰はそこまで深いのである。
 それは華僑の間でも同じである。世界各地にいる彼等もまた関羽を深く信仰していた。そして彼を祭る廟が置かれている。それはこの神戸においても同じであった。
「ここです」
 本郷はその正門を前にして巡査に対してそう言った。
「ここですか」
「はい」
 答えるその顔が険しくなっている。
「感じますね、これはかなり強い」
 正門の向こうを見据えながらそう言う。
「ここまで強い妖気は・・・・・・。間違いないです」
「ここにいるのですか」
「はい」
 答えながら正門に足を踏み入れる。赤い柱に青い瓦が闇の中に映える。中華風の立派な門であった。
「では行きますか。用意はいいですか」
「はい・・・・・・む」
 ここで携帯を見る。見ればメールが届いていた。刑事からのものであった。
「ちょっと待って下さい。ここに他のメンバーも来ているそうです」
「早いですね」
「メールで連絡をとっていますから。これだと何かとやり易いんですよ」
「そうですね。俺も役さんとメールでやりとりをしていますし」
「そうなのですか」
「はい。わからなかったですか?」
「ええ。残念ながら」
 小さな声でそう答える。やはり廟の中を警戒していた。
「本郷さん動きが速いですから。追いつくのだけで必死でしたよ」
「これは失敬。ですが話はこれ位にして」
「はい」
 二人の周りに他の警官達も集まってきた。見れば皆私服である。
 だが目の光が違っていた。鋭い。そして身のこなしも普通の市民とは違っていた。それで彼等が警官であるとわかった。少なくとも本郷にとってはそうであった。
「行きましょう。準備はいいですか」
「勿論」
 警官達はそれに答えた。そして身構えた。
「では」
 そして彼等は中に踏み込んだ。廟の中は静まり返り物音一つしなかった。だが本郷はその中で警戒を緩めなかった。
 暗闇の中で廟の赤い柱が所々に見える。そして木々も見える。だがその他には何も見えず、何も感じられない。少なくとも警官達はそうであった。
 だが本郷は違っていた。そこに何かを感じていた。彼は険しい顔のまま進んでいく。
「あの」
 そんな彼に巡査が小声で囁きかけてきた。
「どうしました?」
「本当にここにいるんですか?」
「はい」
 彼は小さな声で答えた。
「すぐ側にいます。注意して下さい」
「はあ」
 それを聞いても彼はまだ半信半疑だった。
「そうなのですか」
「すぐに会えますよ。用心して下さい」
「わかりました」
 そう答えながらもピンとこなかった。彼にはそれが本当のことかよくわからなかった。
 そのまま尚も進んでいく。そのまま礼堂の方へ入る。そこで本郷の足が止まった。
「むっ」
「まさか」
 警官達は彼
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