第五章
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く敵は我々とそう変わらない姿をしております」
「しかし鏡には映らない、と」
「残念ですが」
しかしそれには首を横に振った。
「映る場合もあります。鏡はその魂を映すものですから」
「あれ、けれど映画では」
「あれも映画でできた話なのですよ。実際の吸血鬼はそうとは限りません」
「またですか」
「はい。あれはドイツとかその辺りの話です。吸血鬼には魂があります。いえ、わかりやすく言うと死体によからぬ魂が宿っていると言いましょうか」
「すなわち魂が本体で死体はかりそめの宿、ということですか」
「はい。あくまで本体は魂です。ですから問題なのです」
彼はそう言った。
吸血鬼に限らず幽霊も鏡に映らない場合がある。だがこれはその地域によって違う。鏡に映るものもいるのだ。中には鏡から姿を現わして人を魔界に引き込もうとする存在もいる。鏡は魂を映すものであると共に異界への出入り口なのである。時にはそこからよからぬ者が出入りすることもあるのだ。
「例え身体を傷つけても魂さえ無事ならば彼等は甦る場合があります」
「しぶといですね」
「それは映画のドラキュラ伯爵でもそうでしたでしょう。魂さえ無事ならば甦るのです」
「そういえば」
刑事は若い頃見た映画を思い出しながら呟いた。
「その魂自体は人間と同じ姿です。しかし」
役の言葉に剣呑なものが混じった。
「根幹が違う。それはよく覚えておいて下さい」
「わかりました」
刑事は頷いた。そしてそのまま下を覗き込んだ。下には無数の光が輝いていた。本来は実に美しい色取り取りの光である。しかし今刑事にはそれは魔物が潜む魔界の灯火に見えていた。
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