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第二十話 竜使いの少女と…
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その眼にはいつもの凛々しい表情でも、先程見せていた穏やかな笑みでも無く、どこか悲しみを含んだ表情を映している。

「弱者を虐げ、自らに満足感を与える者は幾人もいます。人をだまし、嘲笑い、奪い、そして殺す。そんな人間は後を絶ちません」

セイバーは首を横に振りそう言った。

「皆が協力し合って切りなければいけない状況だとしても、悪事に手を染める者がいる。この世界が現実であっても、そうでないとしても……」

セイバーはそう言うと、目を閉じて口を紡いだ。
まるで、この世すべてに嘆いているかのように。

「―――俺は…仲間を見殺しにした」

おもむろにキリトが口を開いた。

「前に…自分の力を過信しすぎて、俺は仲間を……失った…。俺もある意味、自分勝手で最低な人間だ」

それはキリトの絞り出すような声だった。

自分のレベルであれば大丈夫であろう。
セイバーが共にいれば大丈夫であろう。

結果、その慢心が仲間を失い、生き残った少女にも離れられてしまった。

「キリトさん……」

その事を知らないシリカも、キリトの心の中の葛藤知ってか知らずか、思わずキリトの右手を両手で包みこんでいた。

「キリトさんは、良い人です。あたしを助けてくれたのだから」

キリトは一瞬驚いた表情を見せ、シリカを見つめた。
いつの間にか、体中に入っていた力が抜けて、口元に微笑が滲む。

「……俺が慰められちゃったな。ありがとう、シリカ」

瞬間、シリカの顔が熱くなった。
心なしか心臓の鼓動も速くなる。

慌ててキリトの手を離し、胸を抑えた。

「ど、どうかしたのか……?」

テーブル越しにキリトが乗り出してシリカへと尋ねる。

「ふふふ」
「セイバー?」

キリトの隣でセイバーが意味深な笑みを零した。

「いいえ、ただ…」

セイバーがシリカへと視線を向けた。
透き通るような眼差しで見つめられたシリカは、不覚にも一瞬ドキリとするが、すぐに視線をずらした。

「な、なんなんだ?」
「さぁ?何でしょう?」

セイバーの意味の分からない行動に困惑するキリトは、その後もセイバーに詰め寄るが、セイバーは柳のように受け流し、キリトを軽くいなしていた。

「(……何なんだろ、この胸が刺すような痛み……)」

傍目から見れば恋人にも見えなくもないその行動に、シリカは複雑な気持ちを抱きながら見つめるだけであった。


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