第二十話 竜使いの少女と…
[4/4]
[8]前話 [9]前 最初 [1]後書き [2]次話
その眼にはいつもの凛々しい表情でも、先程見せていた穏やかな笑みでも無く、どこか悲しみを含んだ表情を映している。
「弱者を虐げ、自らに満足感を与える者は幾人もいます。人をだまし、嘲笑い、奪い、そして殺す。そんな人間は後を絶ちません」
セイバーは首を横に振りそう言った。
「皆が協力し合って切りなければいけない状況だとしても、悪事に手を染める者がいる。この世界が現実であっても、そうでないとしても……」
セイバーはそう言うと、目を閉じて口を紡いだ。
まるで、この世すべてに嘆いているかのように。
「―――俺は…仲間を見殺しにした」
おもむろにキリトが口を開いた。
「前に…自分の力を過信しすぎて、俺は仲間を……失った…。俺もある意味、自分勝手で最低な人間だ」
それはキリトの絞り出すような声だった。
自分のレベルであれば大丈夫であろう。
セイバーが共にいれば大丈夫であろう。
結果、その慢心が仲間を失い、生き残った少女にも離れられてしまった。
「キリトさん……」
その事を知らないシリカも、キリトの心の中の葛藤知ってか知らずか、思わずキリトの右手を両手で包みこんでいた。
「キリトさんは、良い人です。あたしを助けてくれたのだから」
キリトは一瞬驚いた表情を見せ、シリカを見つめた。
いつの間にか、体中に入っていた力が抜けて、口元に微笑が滲む。
「……俺が慰められちゃったな。ありがとう、シリカ」
瞬間、シリカの顔が熱くなった。
心なしか心臓の鼓動も速くなる。
慌ててキリトの手を離し、胸を抑えた。
「ど、どうかしたのか……?」
テーブル越しにキリトが乗り出してシリカへと尋ねる。
「ふふふ」
「セイバー?」
キリトの隣でセイバーが意味深な笑みを零した。
「いいえ、ただ…」
セイバーがシリカへと視線を向けた。
透き通るような眼差しで見つめられたシリカは、不覚にも一瞬ドキリとするが、すぐに視線をずらした。
「な、なんなんだ?」
「さぁ?何でしょう?」
セイバーの意味の分からない行動に困惑するキリトは、その後もセイバーに詰め寄るが、セイバーは柳のように受け流し、キリトを軽くいなしていた。
「(……何なんだろ、この胸が刺すような痛み……)」
傍目から見れば恋人にも見えなくもないその行動に、シリカは複雑な気持ちを抱きながら見つめるだけであった。
[8]前話 [9]前 最初 [1]後書き [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ