第三章
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「ううむ」
それを聞いてさらにわからないといった顔になった。刑事には理解出来ない話であったようだ。だがここで署長が刑事に対して言った。
「小泉八雲の小説は読んだことがあるかな」
「小泉八雲ですか」
「うん。それに出ているんだ。首が飛ぶろくろ首がな」
「はあ」
それを聞いてもまだ信じられないようであった。
「何分小泉八雲は好きではないので」
「そうか。なら仕方がないか。それ出ているんだ」
署長はそう説明をした。
「夜中に飛んで人の血を吸う。そうした妖怪なんだ」
「そんなのもろくろ首なのですか」
「はい」
役が頷いた。
「元々は中国の妖怪でして。首が飛ぶという話もそこから来ているのです」
「中国の妖怪だったのですか、そもそもは」
「はい」
「あれ、おかしいですね」
それを聞いて大森巡査が声をあげた。
「中国には吸血鬼はいないんじゃなかったんですか?」
「いえ」
だが役はそれをすぐに首を横に振って否定した。
「いますよ、ちゃんと」
「ほら、キョンシーっていますよね。映画になった」
「はい」
これは彼も良く知っていた。何処かコミカルな生ける死者の妖怪である。そうした筋ではアンデットとも呼ばれる。
「あれがそうなのですよ。キョンシーも人の血を吸います」
「そうだったのですか」
「ええ。他にもいますよ。まあ半ば人を食らうのと同じですが」
「吸血鬼というのは実際はそうしたところが曖昧で。人を食ったりもします」
「人をですか」
「はい」
今度は署長にも答えた。
「ここの吸血鬼もそうなのでしょうか」
「いえ、それはないです」
彼はそれは否定した。
「どうやらそれを考えるとそうした種類のものではないようです」
「そうでしたか」
役はそれを聞いて頷いた。
「それではキョンシーやそういった類のものではないようですね」
「はい。実は中華街の方でも事件がありまして」
「あちらでも」
「ええ。その写真がこれです」
彼はそう言いながら自分の机の上に置いてある写真を役と本郷に見せた。そこには青ざめた顔でアスファルトに転がる少女が映っていた。見ればまだ高校生程であった。赤い中華風の服を着ているところを見ると華僑の女の子であろうか。その綺麗な顔に死相が浮かんでいた。
「昨日のことでした」
署長は語りはじめた。
「中華街の方でまた原因不明の殺人事件があったと聞きまして。七尾刑事達に行ってもらったのですが」
「結果がこれです。既に全身の血を抜かれて息絶えておりました」
「・・・・・・・・・」
二人はそれを聞いても何も語らない。ただ少女のその写真を見ていた。
「犯行時間は大体夜の九時頃、目撃者はおりませんでした」
「誰も犯人の姿は見なかったということですか」
「ええ」
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