第四十九話〜傷跡と交渉〜
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見る。
(どこか、見覚えがある)
そんなことを考えながら、ライは自分がベッドに寝ていることを自覚すると身を起こした。そしてまず初めに自分の状況を確認していく。服装は襲撃の時に着ていたアッシュフォード学園の制服を着ていた。
服装を確認すると、ベッドから降りて体を軽く動かす。そして『違和感を覚えないこと』に違和感を覚える。
(怪我が)
ライの中の最後の記憶では、自分の体がそれなりの深手を負っていたことを思い出しライは首を傾げた。だが、そのライの疑問は割と簡単に溶けることになる。
制服のポケットと胸元を探り、ライは目的のものを取り出す。
(蒼月、パラディン。認証コード――)
念話で自らの相棒たちのロックを解いていく。
((コード認証、確認……マスター、身体は大丈夫ですか?))
(僕は大丈夫。それよりもここまでの経緯の説明を)
ライが引き続き念話を使い情報を揃えていく。そしてライは今の自分の置かれた状況を把握する。
(君たちへのハッキングは?)
(スキャンはされました。しかしハッキングされそうになった際には逆ハックをかけた所で回線を遮断されました)
(そうか……念の為に自己診断プログラムのチェックとファイヤーウォールの設定変更をよろしく)
そこまで指示を出したところで、その部屋のドアが開かれる。扉の開閉音がした方にライが首を向けると、そこには初対面ではあるが知っている人物がいた。
「ジェイル……スッカリエッティ」
「ふむ、自己紹介は不要のようだね、ライ・ランペルージ君」
紫の髪に金の瞳。そしてどこか狂気の色を見せる雰囲気を纏った研究者が立っていた。
彼は部屋に入ってくるなり、備え付けの対面式のテーブルに腰を降ろす。
「こうして会うのは初めてだが……いやはや奇妙なものだね。画面越しでは何度も君を見ているというのに」
敵意ではなく好奇心を、その金の瞳に宿らせながらジェイルはどこか楽しそうにそう語る。その彼にどこか違和感を覚えながらもライは招待に応えるように彼の対面に座った。
「僕に何のようだ?」
「性急だね。科学者向けの思考だよ」
「生憎、人としての道徳感を捨てる気はない」
「どういうことだね?」
「科学者の行き着く先には壁がある。その壁に当たった時に、当人には2つの選択肢がある」
ライは2本の指を立てながら言葉を紡ぐ。
「人としての感情を壊し科学者の道を取るか、若しくは科学者としての道を選ばずに人が当たり前に持つ倫理観を守るか、だ」
「なかなか興味深い選択だね」
「僕には前者を選ぶ気はさらさらない」
暗に『あなたと同類になる気はない』という意思表示を見せるライであったが、そ
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