第四十九話〜傷跡と交渉〜
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全うしていた。だが、作業が進み瓦礫の撤去を行い始めた時に“それ”を見つけてしまったのだ。
“それ”は少し高級なお菓子の缶箱。それは奇跡的に表面が焦げて凹むぐらいの損傷しかなく、中身はほぼ無傷であった。
そしてその箱になのはは見覚えがあったのだ。ヴィヴィオがいつも大切そうにしまっていた箱。なのはにも見せてくれなかったその中には、桜の折り紙となのはが買って上げたうさぎのぬいぐるみ、そして一枚の白い画用紙が畳まれて入っていた。
桜の折り紙はライがヴィヴィオにあげていたのをなのはは知っていた。だから、ここにそれが入っていたことに驚きはなかったのだが、もう一枚の画用紙の方にはなのはにも見覚えがなかった。
恐る恐るその画用紙を開くとそこには絵と言葉が綴ってあった。絵はなのはと思われる女性とライと思われる男性が描かれており、その絵の横にまだ覚えたての拙い文字でこう書かれていた。
『いつも守ってくれてありがとう』
それを見た瞬間、なのははその場で泣き崩れた。恥も外聞もなく、ただ胸の内にあふれる感情を吐き出すように、声と涙を出し続けた。そして彼女にこれ以上の仕事を任せることができないと判断したティアナが、他の職員に頼み、なのはを六課の隊舎の近くに建てられた休憩スペースに運ばせるのであった。
なのはを抜けさせた事が自分の一存であると自覚していたティアナは、これまで休憩も入れずになのはの分の仕事も行っていたのである。
「先ほど教会からの連絡でスバル達の意識も戻ったそうだ。見舞いに行ってやれ」
「……はい」
シグナムの言葉に頷き、今度こそティアナはその場を後にした。
そのティアナを視線だけで見送り、改めて焼けた隊舎を見たシグナムは目を細め静かに、だがしっかりとその言葉を口にした。
「このままでは済まさん」
聖王教会・病院棟
普段とは違い、騒がしくなっている教会の病院の一室。そこにエリオ、キャロ、スバル、ギンガそしてフリードがそれぞれ身体のどこらかに包帯が巻かれた状態で休憩させられていた。『させられている』と言うのは、強制的に休憩を取らせないと彼らは勝手に現場に行こうとしてしまうからである。
因みに、怪我が酷いギンガはベッドに横たわり、スバル、エリオ、キャロは部屋に備え付けのソファに腰掛け、フリードはキャロの膝の上で寝息を立てていた。
「「「「……」」」」
そこにいる全員が先の襲撃で一度気絶し、そしてつい先ほど意識を取り戻していたが、皆沈痛な表情を浮かべて沈黙していた。
エリオとキャロは襲撃の際にヴィヴィオが敵に連れ去られる場面に遭遇したのだが、彼女を取り返すことが出来なかった事に対する無力感から。そして、スバルとギンガは未だ見つからない、ライの行方不明の原因を作ったと言う
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