第四十九話〜傷跡と交渉〜
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公開意見陳述会襲撃。
少なくとも、管理局内では大きく名を残すであろうその事件の引き金が引かれてから数日が経った。
事件当初は後手後手に回っていた管理局ではあったが、事件が一区切りを迎えてからの活動は巨大組織としての利便性を最大限活用することになった。
管理局という組織はその活動範囲の広大さ故に様々な場所にその部署が存在する。今回の襲撃で管理局のトップの大半が襲撃の被害を受けていると言っても、その部下や下部組織は未だ健在なのだ。その為、被害を受けた街の復興作業、市民に対する限定的な情報開示など、その事件後の対応は迅速に行われた。
その今出来うる限り、最善の対応を行っている管理局ではあったが、その実組織の内側はボロボロであった。
今回の襲撃に使われたガジェットとナイトメアフレームという驚異の対処方法。襲撃犯たちの明確な目的。犯人の現在の居場所。挙げ始めるとキリのない懸案事項は山のようにある。
だが、それらの捜索についての陣頭指揮をとることができ、且つ、陸海空問わず多くの人間を動かすことができるだけのカリスマを持った人材が今の管理局にはいなかった。こんな時でも、組織内での軋轢が彼らの行動の一部を阻害していたのだ。一丸となるべき時にそれができないのは、組織ゆえの弊害と言えた。なので、今できるのは現場レベルで判断のできる活動のみである。
機動六課・隊舎
新品同様であったその建物は、今は所々が焼け落ちて大半が瓦礫に変わっていた。無事に残っている部分も火災の時に舞い上がった煤で黒ずんでいる。おおよそ人が活動できる機能の大半が失われたその場所に、それでも人は大勢いた。
今現在、六課の隊舎のあった場所には二種類の職員がいた。一方は瓦礫などを撤去する職員、もう片方は現場検証を行う職員である。だが、その比率はかなり偏っており、現場検証を行っている職員の方が明らかに少なかった。
「ティアナ、ここはもういい。一旦休め」
撤去作業を行っていた職員と検証内容の確認を行い、一段落着いたティアナはシグナムに声をかけられた。
「ですが――」
「襲撃から今日まで休んでいないだろう。倒れられてはかなわん」
厳しい言葉を投げつけてくるシグナムの不器用ながらの優しさを感じているティアナはそれでもこの場を離れることを渋っていた。その理由を知っていたシグナムは先ほどとは違い厳しさを感じない声で話し出す。
「高町が抜けたことを気にしすぎだ。あいつはお前の師であり目標だろう。ならば、信じることはお前の義務だ」
「……はい」
ティアナが現場に残ろうとしていた理由。それはつい先程まで現場検証を共に行っていたなのはにあった。
検証が始まった当初、彼女はいつもよりも気丈に振る舞い、黙々と職務を
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