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港町の闇
第二十六章
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いからな。別のものにしろ」
「じゃあどれがいいかな」
「中華街」
「それもなあ」
 こんな話をしているうちに適当なことろで話がついた。とりあえずスキヤキで、ということになった。一向は派手に飲み食いした後でお別れとなった。朝になり阪急線に向かった。
「それじゃあこれで」
「はい」
 本郷と役、そして神父が警官達に別れを告げる。署長が彼等の先頭にいた。
「お別れですね。何か長いようで短かったです」
「ですん。その間色々とありましたが」
 一同の脳裏にアルノルトとの死闘が思い起こされる。激しく、そして熾烈な戦いであった。
 だがそれが終わればもう懐かしいものになりつつあった。遠い記憶となろうとしている。
「またご一緒に、とはいきたくはないですが」
「はい」
 役は署長の言葉に苦笑いした。こうした魔物を相手にすることは本来あってはならないことであるからだ。
「機会があれば御会いしましょう。今度は」
「神戸牛のステーキを」
 本郷がそう口を挟んできた。
「たっぷりと頂きたいですね」
「ははは、そうですね」
 署長は顔を崩して笑ってそれに頷いた。
「あれは確かに美味いですから」
「あとワインと」 
 役が合わせる。
「赤でね。それも神戸ワインで」
「お、いいですな」
 署長はそれを聞いてさらに機嫌をよくした。
「私も神戸のワインは好きですよ。あれはなかなかいけます」
「ワインですか」
 それを聞いて神父も話に入ってきた。
「是非共それを飲ませて頂きたいですね」
「神父さんもワインはお好きですか」
「キリストの血ですから」
 彼は微笑んでそれに答えた。
「謹んで飲ませて頂きたいです」
「そういうことなら」
 役がそれに応えた。
「神戸には幾らでも売っていますけれど。どうですか、ドイツへのおみやげに」
「おみやげなぞとんでもない」
「ではどうなさるのですか」
「日本で飲みたいですね。帰路で」
「ははは、そうですか」
 どうやらこの神父は見かけによらずかなりいける口であるらしい。
「それでは神戸駅でたっぷりと買いますか」
「そうですね。駅でも売っているのであれば」
「丁度大きな店もありまして。百貨店とか。そこで買いましょう」
「はい」
「いいですな。何だか羨ましい」
 署長はそれを聞いて三人に対して言った。
「仕事を終えて酒を楽しまれるとは。私はこれから仕事の山ですぞ」
「まあまあ」
「署長さんもそれが終われば一杯できますよ」
「だといいですけれどね」
 本郷と役の言葉に苦笑いで応える。
「最近は家でもあまり飲めなくて。うちのやつが家で飲むなと」
「何でですか」
「子供の教育に影響があるとか。困ったものです」
 どうやらこの署長も妻には弱いようであった。
「結婚
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