第一物語・後半-日来独立編-
第五十二章 その場所へ想い走らせたならば《3》
[5/7]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
が必要だと、思い、何時でも何処でも彼女の側にいて、彼女のために尽くした。
遊び盛りな年の時も、自分は彼女を護ることが役目なのだからと、言い聞かせ側に居続けた。
そんな実之芽に気が付いてか、奏鳴は彼女なりの気遣いとして実之芽のことを存分に頼った。
『実之芽さん、三つ編みってどうやるの?』
『それでは三つ編みは出来ませんよ。まず髪を二つではなく三つに分けなければ駄目です』
『あ……』
『ふふ、おっちょこちょいですね奏鳴様は』
年上だからとさん付けで呼び、もう一人の姉代わりとなってくれた実之芽に奏鳴は感謝していた。
自分の時間を潰してまで尽くしてくれることが、ありがたかったから。
だが実之芽も意思を人間だ。
奏鳴に対して気に入らないところはあったし、うっとうしいと思う時もあった。
しかし、時折見せる奏鳴の笑顔が彼女には眩しかった。
『何時もありがとな、実之芽』
彼女が大きく変わったのは、高等部に入った時だ。
彼女は草野芽家の長女として、役目を果たすことを選び、気に入らないところは気に入るように、うっとうしいと思う前に自分がうっとうしくなるようにした。
彼女が頼れる者は自分だけなのだと、気付くまでは嫌々やっていたことにも気付いた。
自分を恥じ、新たな決意を持って今まで遣えてきた。
これからも側に遣えさせてもらえるのだと、思っていた。
だが、“これから”は無かった。
彼女は黄森の者を殺したことにより、解放されることとなった。
どうにかしようと、黄森に何度も交渉しにいったが答えは何時も同じ。
『お前は人殺しを庇うのか』
反論は出来無かった。
確かに、人を殺した。それは人殺しだ。
悔しかった。反論出来無かった自分が。
悔しくて、握っていた掌から血が滴る程に。
そして今へと至る。
実之芽のこれまでの生涯にとって、委伊達家は、奏鳴は深く関わっている。
遣える者として、委伊達家の唯一の生き残りである奏鳴のために全てを捧げた。
だからこそ、誰よりも実之芽が苦しんだ。
『どうするのですか。我々はどうしたら』
周りの者からは草野芽家の者として、どうするのかを問われ、逆にこうしろと言われもした。
両親は実之芽に代わってその対処で忙しかった。
まるで実之芽から両親を引き離すように、辰ノ大花の者達は草野芽家に答えを求めた。
余計に分からなくなった。
草野芽家として判断をしているのか、それとも実之芽という個人として判断をしているのか。
家系に苦しむ者のみが得る苦しみが、彼女にも襲い掛かったのだ。
「ああ……こんなにも苦しむのだったら、産まれなかった方がよかった……」
諦めの言葉にも似たものを、口からぼそりと吐いた。
もう彼女には考える気力すら、今にも消え
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ