第五十四話 富の為にその六
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「だからいいんだよ」
「それで君はそれにしたか」
「栄養には気を遣ってるんだよ」
中田はそのレバニラを食べながら広瀬に述べる。
「羊もカロリー少ないだろ」
「しかも蛋白質も多い」
「いい食べ物だよな」
「だから今も食べている」
彼にしてもそういうことだった。
「こうしてな」
「俺も明日それにしようか、美味いしな」
「勝手にすればいい。とにかくだ」
「本題に入るけれどいいかい?」
中田は笑いながら広瀬に言う。
「俺達のことでな」
「闘うのならこの後にするか」
「食った後でだな」
「少なくとも今はお互い止めておこうとなっている筈だ」
このことをまた確認する。
「そうだな」
「食った後でも今は止めておこうな」
「君にそのつもりはないか」
「ああ、また今度にしような」
二人のことは今はそういうことになった、だがこれで終わらなかった。
中田はその広瀬にあらためてこうも言ったのである。
「声から聞いたけれどまた出て来たらしいな」
「十一人目だな」
「その人が出たらしいな」
「俺はもう会った」
広瀬は中華街のことを話した。
「中華街でな」
「へえ、あそこでかい」
「あちらから来た、広州からな」
「中国人なんだな」
「料理人らしい」
「如何にも中華街って訳か」
「そうなるな」
広瀬もそのタレで味付けされたうえで焼かれたマトンのスライスしたものを食べながら中田に対して述べた。
「中華街に料理人としているからな」
「それだけ聞いたらいいんだがね」
「しかし剣士だ」
このことがある、それでだった。
「俺達と戦う立場の相手だ」
「嫌だねえ、本当に」
中田は味噌汁をすすりながら己の口の左端を歪めて言った。
「戦うなんてね」
「君が言うことじゃないんじゃないかな」
「戦わずに済むに越したことはないさ」
この考えはここでも健在だった。
「俺にしてもな」
「そういう考えだったな、君は」
「まあな、それはあんたもだよな」
笑って広瀬に返した。
「そうだよな」
「命を賭けないで得られるならそれでいい」
広瀬もこう言う。
「有り難いことだ」
「だよな、本当にな」
「自分に他人を傷付けてまで適えたいものもある」
「それはあってもな」
「そうしないで得られるならそれでいい」
「全くだね。何かあんたと俺は似てるかもな」
中田は焼いたそのレバーを食べながら言う。
「そう考えるところはな」
「いや、違うな」
だが中田の今の言葉は広瀬はきっぱりと否定した、そしてどう違うかも中田に対して話したのだった。
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