第五十四話 富の為にその二
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「そして戦おう」
「うん、それじゃあね」
こうした話をしていた、そのうえでだった。
王は最後にこう広瀬に告げた。
「また会おう」
「戦う為にな」
擦れ違う一瞬でここまで話した、そのうえでだった。
広瀬は王と別れ今は由乃との日常に戻った。由乃は広瀬に顔を向けて笑顔でこう言ってきたのだった。
「ねえ、これからレストランに行くじゃない」
「あの店か」
「そう、中華レストランだけれど」
「あの店は広東料理だ。しかも」
「バイキングよね」
「それに北京ダッグが出る」
広瀬は由乃に笑顔を向けてそのうえで話す。
「その場で調理したものをお客さんに皿に入れて出してくれる」
「凄いわよね。北京ダッグっていったら」
由乃は憧れに目を輝かせて言った。
「中華料理の中でも最高峰っていうか」
「一番美味い料理の一つとされているな」
「実際に私大好きだから」
笑顔で広瀬に言う由乃だった。
「楽しみにしてるわ」
「それがバイキングで食えるからな」
「凄いわよね。いい時代になったわ」
「家鴨も普通に口に出来る様になった」
日本でもだ、北京ダッグだけでなく家鴨の肉自体がそうなってきているしその卵であるピータンもである。
「いい時代になった」
「本当にね」
「牧場で家鴨は」
「うちはやらないわ」
由乃は自分の家では家鴨は飼わないと答えた。
「その鳥はね」
「そうか」
「鶏だけよ」
鳥はこれだけだというのだ。
「あとは牛とか馬ね」
「それに豚だな」
「羊とね」
やはりその中に家鴨はない。
「それだけで充分だし」
「そうか、わかった」
「ええ。けれど鶏もね」
由乃はこの鳥の話をはじめた。
「あれはあれでいいじゃない」
「鶏はいい鳥だな」
「食べて美味しいし栄養があるわよ」
にこりと笑ってこう話す。
「卵もあるから」
「そうだな。あれだけで商売になる」
「ところが安いから」
「難しいか」
「鶏は難しいのよ」
由乃は農家のことを話す、農家も楽ではないのだ。
「牛や豚もだけれどね」
「仕事にするのは楽じゃないか」
「楽じゃない仕事はないでしょ」
実にシビアな現実である。
「実際のところね」
「それもそうだな」
「そうよ。私の家中華街にも入れてるけれど」
「鶏か?」
「そう、卵ね」
それを入れているというのだ。
「中華料理の朝の定番に合ってるって言われてね」
「中国の朝か」
「そう、茶たまご」
ここでこの料理の名前が出た。
「ゆで卵をお茶で煮たお料理よ。これがまた美味しいのよ」
「あれか」
丁度広瀬の目の前にその料理があった、店頭に売られていてぐつぐつと音を立てる鍋の中にそれがあった。
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