第四十二話 運動会前にその八
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「それだけよ」
「そうですか、五つですか」
「だからどれもって訳ではないわよ」
数多いゆるキャラ達の中から選ばないとならないというのだ。
「問題はどれを選ぶかよ」
「はい、八条グループのゆるキャラのパンフレットよ」
部長の左隣の席にいた副部長がここでそのパンフレットを出してきた、それも二冊だ。
「一冊は右から、もう一冊は左から回してね」
「わかりました、じゃあ」
「見させてもらいます」
「具体的にどれがいいか言ってね」
見てからだというのだ、そのゆるキャラ達を。
「そうしてね」
「わかりました」
こうしてだった、そのパンフレットが回されてだった。
皆はそのゆるキャラ達を見た、部長は皆が見終わり副部長の手にその二冊のパンフレットが戻ったところで一同に問うた。
「じゃあ意見を聞くわね」
「はい、どのキャラがいいのか」
「今からですね」
「言ってみて、まずはね」
誰でもどのキャラでもいいから挙げてくれというのだ、まずはそれからだった。
「どのキャラかね」
「おおさかんですか?」
一人が八条百貨店大阪店のゆるキャラを出した、二頭身の丁稚の格好のキャラだ、頭は江戸時代の子供を模した髷だ。
「これよくないですか?」
「まずはこれね」
「はい」
部長の右隣の娘が立って後ろのホワイトボードに黒マジックでおおさかんと書いた。部長はそれを確かめてから皆にまた問うた。
「まずはこれね、他は?」
「仙台牛ですか?」
仙台に本社がある八条牛乳のゆるキャラだ、目が可愛いホルスタインだ。
「これどうですか?」
「じゃあこれね、次は?」
「信長君」
八条電鉄名古屋駅のマスコットだ、愛知なので信長なのだ。
「超時空天下人ヒデヨシ」
八条博物館、大阪のそこのゆるキャラだ。大阪ということで二頭身の豊臣秀吉をゆるキャラにしたのである。
「かすてらマン」
長崎の八条観光長崎支店のキャラだ、カステラの顔に身体がある。
「カープ八番」
八条バス中国のマスコットだ、広島東洋カープの八番山本浩二の現役時代を念頭において作られたキャラだ。
「肉じゃがおばさん」
八条運送京都支社だ、舞鶴名物肉じゃがを作るおばさんパーマのキャラだ。
「梅干マン」
八条商事和歌山支社のマスコットキャラだ、赤い梅干から手足が生えているパックマンの様な外見である。
「奈良の怨霊」
本名はセイント君だが頭に角がある仏教の小僧の姿からこうした通称になっている、奈良の八条美術館の館長が何を迷ったのか公募の中から最悪のものを選んだのだ。
そのゆるキャラについては、部長はこう言った。
「これ却下したいけれど」
「駄目ですか?」
提案者の一年の娘が問い返す。
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