第二十章
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ば彼は半分人間ではなかった。妖狐の血を引いていたということになるのだ。これは彼のあまりもの力が為に出て来た伝説というのがもっぱらの噂であるが実際にそれ程までの魔力を持っていたのである。それ程彼の力は絶大であった。
「清明も式神をあらゆることに使いました」
そしてこう述べた。
「式神はね、ただ戦う為に使うのではないのですよ」
「はあ」
「色々な使い道があります。今からそれをお見せ致しましょう」
そう言うと懐から無数の紙を取り出してきた。五色あった。白、赤、青、黒、そして黄である。それが五行思想に基づくものであることは言うまでもない。次にそれをまず一振りした。
「行け」
彼がそう言うと紙が一斉に動いた。そしてそれは宙に舞い鳥となった。五色のそれぞれの鳥達が舞いはじめた。
鳥達は壁を通り抜けて部屋を出て行った。そして皆何処かへと消え去ってしまっていた。
「これでよし」
「あの式神達で何をされるのですか」
「探すのですよ」
役は答えた。
「敵をね」
「あの吸血鬼のことですね」
「ええ。人が探すのなら限界がありますね」
「はい」
「しかし空を飛ぶ鳥、しかも式神ならば」
彼は言った。
「その範囲は人のそれとは比較になりませんね。そういうことです」
「成程」
署長はそれを聞いて思わず感嘆の言葉を漏らした。
「お見事です。これならば必ずやあの魔物を見つけ出すことができるでしょう」
「それはどうでしょうか」
だが役はそれに懐疑的な言葉を述べた。
「何かあるのですか」
「署長もあの男の力は御聞きしていますよね」
「はい」
署長は頷いた。
「分身したり自分の髪で槍を作ったり血から使い魔を出したり。まさに魔物ですね」
「そして魔法陣の中に消えたり。まさに魔物です」
「あれ程の力を持つ者は滅多におりません」
神父も言った。
「魔界の魔王達でもない限りね」
「魔王、ですか」
署長だけではなかった。警官達はそれを聞いて喉をゴクリ、と鳴らせた。
「それだけ相手は手強いということですよ」
本郷の言葉はこうした時によくあるフォローの類ではなかった。
「ですからあの式神だけで容易にことが解決するとは思ってはいけませんよ」
「ではどうすれば」
「次にこれを出します」
役は今度は指を鳴らせた。すると彼の後ろに異形の者達が姿を現わした。
「うわっ・・・・・・」
何人かはその姿を見ただけで声を漏らした。それは鬼達であった。
「おそらく向こうも使い魔を送り出しているでしょう。その相手は彼等にしてもらいます」
「彼等は鬼ですよね」
「ええ」
警官の一人の問いに対して答えた。
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