第二部 文化祭
第41.5話
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「じゃあわたし、音楽室へ歌の練習に行ってくるね」
放課後。アスナがにっこりと言った。
「あ、なら俺も一緒に……」
「君はこないで!」
こちらをビシッと指差す。
「な、なんで」
「いいから来ないで、絶対に来ないで。当日のサプライズなんだから」
「なにが?」
「あー、もう!」
何故だかアスナの小さな拳が、目の前に迫ってきたので、俺は反射的に右手で受けた。
「……凶暴な女の子は基本モテないんだぞ」
「余計なお世話です!」
アスナはツンと顔を逸らすと、廊下を1人でずんずん歩いていった。
「そういえば、もう文化祭直前だな……」
俺は呟き、まりあに渡された楽譜を鞄から取り出す。
「人前で歌うなんて、絶対嫌なんだけどなあ」
「そ・れ・は、あたしも一緒だよお兄ちゃん」
「うわっ!?」
いつの間に来ていたのか、直葉が俺の顔を覗き込んでいた。
直葉は不機嫌な顔で言う。
「ひどーいお兄ちゃん、妹に対して何その反応」
「す、すまん……」
「まあいいけどー。お兄ちゃんの小学校4年生の授業参観の日の出来事、みんなにバラしちゃうだけだし」
「え? 小学4年……小学4年……はッ! や、やめろ直葉早まるな、お願いやめて下さい直葉様」
「どーしよっかなー」
直葉は完全に面白がっている。だからたぶん冗談だろうけど。
「ていうか、なんでそこまでする必要があるんだよ!?」
「うーん、暇だから?」
「そんなことで人の暴露話をするのはどうかと思うけどね」
「まあまあまあ。冗談冗談」
小学4年の黒歴史。あれを広められたら、俺は自ら退学届を出す──それか自殺する。
「で、スグは何しに来たんだ? ここ高等部校舎だぞ」
「暇だから遊びに来たの」
「勉強しろ中学生」
「その言葉、リボンつけてお返しするわよ高校生」
俺と直葉が睨み合っていると、高く可愛らしい声が飛んできた。
「いたいた、直葉ちゃん! こんなところにいたのね」
少し離れたところに、小さな影が仁王立ちしている。
直葉の親友だ。直葉は手を振りながら、そちらへ駆け寄って言う。
「シリカちゃん! どうしたの、何か用事?」
「用事もなにも……あっ」
シリカは俺に気づくと、軽く頭を下げた。
「キリトさん、お久しぶりです!」
「やあ、シリカ。お久しぶり……だっけ?」
俺が首を傾げていると、シリカは直葉の腕を掴んだ。
「あたし達はこれから、文化祭に向けて練習するので! キリトさん、失礼します!」
「え〜!? せっかくお兄ちゃんと二人きりだったのにー」
「だからこそ行くのー」
「シリカちゃんのいじわる〜!」
妹達の謎会話に溜め息を吐き、再び廊下
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