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港町の闇
第二章
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けれどな」
 役は苦笑してそう言った。
「歳をとるとね。辛くなってくる」
「まさか」
 警官はそれを聞いて笑った。
「役さんでしたね」
「はい」
「見ればまだお若いじゃないですか。とてもそんなことを仰るお歳には」
「外見はね」
「外見は!?」
 彼はそれを聞いて眉を顰めさせた。
「まさか本当はかなりのお歳だとか」
「俺と数歳しか変わりませんよ」
 ここで本郷がこう言った。
「そうなのですか」
「ええ、まあ」
 役は言葉を誤魔化すようにして言った。
「それでもね。何かと京都は夏と冬が過ごしにくくて」
「でしょうね。私は生まれも育ちも神戸なのでそこはよくわからないですが」
「はい」
「修学旅行に行った位ですかね。それ以外で行ったことはありません」
「そうですか」
「何かね。縁がなくて」
 実際にはそれだけではない。実は京都と神戸はあまり仲がよくないのである。地域的な感情のせいである。これは京都と大阪も同じである。京都と奈良もだ。京都は周辺の都道府県とはどれもあまり仲がよくないので有名なのである。これは京都の人間が周りの都道府県を田舎と馬鹿にしているのとその都道府県の者が京都人を底意地が悪いと思っているからである。一面においては真実である。
「大阪には結構行きますが」
「大阪には行かれるのですか」
「あそこはね。何か行き易いんですよ」
「そうそう」
 それに本郷が入って来た。
「お巡さんもそう思うでしょ?俺もそうなんですよ」
「貴方もですか」
「はい。やっぱり大阪が一番ですよね」
 本郷は嬉しそうな顔でそう言う。
「俺もね。早く大阪に事務所を構えたいですよ、本当に」
「本郷君」
 役はそれを聞いてムッとした。
「そんなに京都が嫌か」
「嫌というより合わないんですよ、俺には」
「何年も住んでいてか」
「それはそうですけれどそれでも食い物が口には合わないですし」
「またそれか」
 流石にそれを聞いて呆れてしまった。
「君は食べ物が全ての基準か」
「役さんは違いますけれどね」
「そうだ。他にもあるだろう。景色や歴史、文化と」
「それは食べられませんから」
「ふう」
 それを聞いて溜息を吐かずにはいられなかった。
「まあそれも一つの考え方だけれどな」
「どうせ俺は食うことしか考えていませんよ」
「食べ物なら神戸もいいですよ」
 警官も入ってきた。
「ここは何と言ってもステーキですね」
「おお」
 それを聞いた本郷の顔が明るくなった。
「いいですね。それじゃあ仕事の後で」
「まずは仕事だな」
 役がポツリと言った。
「それはわかってるだろうね、本郷君」
「勿論ですよ」
 本郷はそう答えてニヤリと笑った。
「思いきり暴れてやりますよ、今度も」
「ならよし
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