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【IS】何もかも間違ってるかもしれないインフィニット・ストラトス
役者は踊る
第五十幕 「囁きの黒、戸惑いの白」
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前回のあらすじ:白い道と黒の道、汝が進むはどちらの道か
体が動く。俺の意志とは別々に、身だけが勝手に動いている。まるで世界がスローモーションになったかのようにすべての動きが緩慢に見える中、唯一俺の思考と勝手に動く体だけが普通に動いている。
何が起きている?俺の腕を掴み無理やり動かしているのは何だ?現実味のないぼやけた手のような形に変わった泥のようなそれが、万力のように恐ろしい力で俺の体を無理やり動かしているように見えた。現実にこんなものがある訳がない。だからこれも俺の見間違いか何かのはずだ。なのに、俺の体はなぜ動かない?
ふらついた体が操られるようにぐるんと動き、右手の雪片弐型を手放して量子化すると同時に左手に雪片参型を握る。展開速度は不自然なほど速く、その切っ先はこちらに向かう箒の”心臓に”ぴったりと向けられていた。同時にハイパーセンサーにIS本体からの情報が表示された。
≪警告 零落白夜の対人安全確保プログラムが不十分です 今すぐ設定し直してください≫
対人安全確保プログラムとは、確か零落白夜が相手ISの操縦者を傷つけないように組み込まれたプログラムだ。これがあるから雪片弐型も参型も公式の試合で零落白夜を振るうことが出来る。その警告が何を意味するか一夏は一瞬分からなかったが、ふと休暇中にクラースの言っていた言葉を思い出す。
――――シールドそのものを無効化する“零落白夜”なら対人安全確保プログラムを弄れば操縦者を直接攻撃することも出来る―――
ぞくり、と背筋に氷のように冷たい悪寒が流れる。もし俺がこのまま零落白夜を発動させ、なおかつ箒がこの一刀を捌ききれなかったら、果たしてどうなるか。
白式は腹部と脇腹、そして控えめだが胸にも装甲が存在する。対する打鉄の装甲は女性の胸部を圧迫しないように脇の身にしか装甲がついていない。つまり、シールドバリアーがなければその剣先は当たれば確実に箒の心臓を抉るだろう。冗談でも許されるものではない。
だがそれの何がいけない?
(・・・え?)
その程度で抉られるような心臓なら、今のうちに抉っておいた方が箒のためだろ。
俺の心臓が抉られたかのように不自然に跳ねた。聞こえたそれはとても聞き覚えのある声――それはそうだろう。だって、この声は、俺の声なのだから。意味が分からなかった。何をどうしたらそんなふうに考えが帰結するのか、理解したいとも思わなかった。でも、何度反芻してもそれはやはり俺の声だった。
幻聴だ、と自分に言い聞かせるが、同時にこれは幻聴なんかではないと確信している自分もいた。
(・・・何を考えてる?”俺は今、何を考えた?いや、そもそも俺が考えたのか、これは!?)
生意気なんだよ、昔は俺より弱かったくせに
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