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【IS】何もかも間違ってるかもしれないインフィニット・ストラトス
役者は踊る
第四九幕 「零の領域」
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じて囁いた箒の一言に、一夏はぼんやりと今何が起きたのかを察した。あれから6年、どうして俺はいまだに箒が”至っていない”などと馬鹿なことを考えていたのだろうか。
簡単な話だ。零拍子に対抗できるものは、――零拍子しかないではないか。
(でも、それじゃこの衝撃は何だ?これは剣というより鈍器で叩き上げられたようなような衝撃だ。篠ノ之流にそんな技は存在しないはずだぞ・・・?)
やがて一夏の零拍子持続時間が終わる。それは、かつての箒であれば決して使えなかった、否、使わなかったであろうもの。箒が零拍子の世界に至った一夏に加えたそれは刀に非ず――打鉄の巨大な”脚”だった。
「け、蹴りだとぉ!?邪道じゃねえか!!」
「見誤ったな一夏!確かに私は剣道一筋だが・・・この蹴りだけは『あの人』直伝の特別だぁぁぁ!!」
ごがぁぁぁぁぁんッ!!
「かっ・・・はっ・・・!?」
一夏の一瞬の動揺の隙に、箒は空中で体を翻し遠心力を乗せた打鉄の回し蹴りをかます。金属と金属が衝突して鈍い音が響いた。白式の胸部を陥没させたのではないかと錯覚するほどの凄まじい衝撃が体を突き抜ける。
空中に投げ出され錐揉みになりながらもほぼ無意識で体勢を立て直そうとする一夏の頭の中は、状況とは裏腹にしみじみと考えていた。
(箒・・・おまえ、本当に変わったな・・・『あの人』ってのが誰かは分かんねぇけど、多分いい方にさ)
昔の箒なら剣道以外の技など学ぶことも使うこともしなかっただろう。それは彼女が篠ノ之流という剣術に誇りを持っており、それ以外を使うのは邪道であると断じていたからだ。先祖代々形を変えながらも脈々と受け継がれてきた先人たちの武の心の結晶に、彼女は潔癖なまでに従っていた。
思えば箒はいつもそうだったのかもしれない。親の言いつけに従い、古くからのしきたりに従い、男はかくあるべきといった昔からの勝手な決めつけに従い、何に対してもその従ったものを他人に押し付け、それ以上に踏み出すことはしていなかった。
それが今はすっかり変わった。あの理不尽な押し付けがましさは見る影もなく、他人を圧迫するような目つきもしなくなった。いつも自然体でいる彼女の周囲はどこか清涼な空気があるような気さえする。篠ノ之流の動きで脚技を放つという剣道の視点から見たらありえない真似もためらいなく実行している。彼女はもう従うだけの子供ではなくなってしまった。
あの蹴りの重さは、箒の6年の歳月で進んだ進歩そのものだ。
姉の事を考え一度は武道の道を離れた俺とそのまま道を突き進んだ箒の差だ。
俺がマイナスをゼロにしている間に箒はゼロを越えた。まるで兎と亀の競争のようではないか。
そんな俺が、何が「勝ち星をもらう」だ。
烏滸
(
おこ
)
がましいにもほどがあるぞ、俺。
箒が止めの一撃を放
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