第十九章
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となっていた。
「あの魔物の街になってしまうのですか」
「ええ」
もう言葉も出せなかった。彼はただ青い顔をしているだけになった。
「ともかく」
そんな彼にかわって七尾刑事が口を開いた。
「それだけは防がなくてはなりません。そうなってしまえば洒落では済みません」
「それはわかっております」
神父は答えた。
「だからこそバチカンも私にこの銀貨を授けてくれたのですから」
応えながらその銀貨を見せる。それは白銀色に輝いていた。そして何者かの肖像が掘り込まれていた。それはどうやら当時のローマ皇帝であるらしい。この時代シオンの地はローマの勢力圏であったのだ。
「この銀貨を」
「問題はそれをどう使うかです」
役が言った。
「おそらくそのままではあの魔物を倒すことはできないでしょう」
「といいますと」
「十字架の件は覚えておられますね」
「ええ」
これは役自身も経験のあることであった。彼は銀の弾丸を放ちそれを髪の毛の槍で無効化されているのである。だからこそ言えることであった。
「あれと同じにはならなくても容易にかわされてしまうでしょう」
「そうですか」
神父はそれを聞いて暗い顔になった。
「それでは意味がありませんね」
「いや、そうともばかり限りませんよ」
だがここで本郷が話に入って来た。
「本郷君」
「役さん、俺がいるじゃないですか」
「君が?」
「ええ」
本郷はにこりと笑って頷いた。
「俺に任せて下さいよ、ここは」
「ふむ」
役はそれを聞いて眉を動かした。
「どうやら何か思うところがあるようだな」
「勿論ですよ。そうでないと何も言いません」
彼は答えた。
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