第六十話 束縛
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「さて、これが私にとっての最後の望みとなるのかな」
全世界へと放送を発信する直前、デュランダルは一人で部屋の椅子にもたれかかりながら独白する。
「人は自由を求めながら秩序を望む。束縛を嫌いながら解放を望まない。難儀なものだ――――そして、そのような矛盾を抱えている人という存在が、他ならぬ人の手によって平和など、得られるはずもないだろうに……」
だからこそ、デュランダルはデスティニープランを望む。そもそも人が人によって平和を創ることなど不可能だ。独裁は不満を齎し、共産は腐敗を生み、民主は愚盲を曝す。人という種の枠には限度がある。ならば人がそれらの支配を行わなければいい。
遺伝子学が発達したこの時代だからこそ許される才能の証明。確かに最初の一代は色々と望まぬものを強いる事となるだろう。無論、遺伝子が総てを決めるなどと言う傲慢なことを言いはしない。環境が社会が彼らという人格を形成させ、社会の概念を変えていく。しかし、遺伝子が重要なファクターであることは誰であろうとも否定できない。
「世界は変わらなくてはならない。今というこの時を逃せば人は何も変わらぬまま同じ過ちを繰り返す事となる。歴史は繰り返され、いつかは彼の言ったように数多の予言の日となってしまう」
人が平和を継続させるなど所詮不可能な世迷言だ。己の器を理解できず、己を知ることをせず、ただ他者を見て、都合の良いものだけが自分にあると錯覚する。それが人という自らを蝕み、やがて種としての人類を滅ぼすことになる。
「だが、遺伝子による支配を望まないというのなら、私はそれもまた是としよう。人の数だけ理想は存在している。そして、それは同時に新たな策を生むことになる」
既に準備は整っている。故に、デュランダルはこのデスティニープランが失敗したところで問題ない。
「これを止めることが出来ないのであれば、所詮それが人の限界だという事だ」
そう言ってデュランダルは座っていた席から立ち上がり、声明を行う為に移動する。
「さあ、運命の始まりだ――――」
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